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#881 『PermaFrost Syndrome』(BAO.UNER/明日方舟/iOS・And)

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YostarとHyperGryphがおくるタワーディフェンス・明日方舟(アークナイツ)より、

BAO.UNER作曲、『PermaFrost Syndrome』(原題は『永冻症』)。

4章のフロストノヴァ戦で流れます。

中国のゲームスタジオ・HyperGryphが開発し、Yostarが運営するスマホ向けアプリとして登場した本作。産業界に莫大な恩恵をもたらす一方で、触れることで致死性の感染症を引き起こす特殊なエネルギー資源・源石をめぐり、表向きは製薬会社を名乗るロドス・アイランドにてドクターを務める主人公は、感染者に纏わる諸問題を解決していくことになる。様々な事情を持ったオペレーター(戦闘キャラ)を指揮し、プレイヤーの采配で敵の侵攻を食い止めるタワーディフェンスゲームで、近未来SFのハードな作風に、動物的な特徴(いわゆるケモミミ)を有するキャラが融合した、独特な世界観が特徴である。職業に応じたオペレーターごとの得手不得手、同じ配置でも向きによって異なる攻撃範囲など、全般的にかなり思考力を問われる硬派な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは主にBAO.UNER氏。中国出身の作曲家で、中国の音楽制作集団・Windbell_Projectの一員である。氏以外には、特にイベント等のボーカル曲において、本邦のDJ Okawari氏やアメリカのObadiah Brown-Beach氏、Jason Walsh氏なども作曲陣に名を連ねている。本作では戦略的な立ち回りを求められるゲーム性にあわせて、緊張感と重厚感あふれるロックやオーケストラ、インダストリアル系のサウンドが揃っている。サウンドトラックは中国国内ではインスト盤とボーカル盤がそれぞれ発売されている。なお、曲名の原題は中国語だが、中国国外向けに英題も付されている。

4章のボスであるフロストノヴァとの戦いで流れるのがこの曲である。彼女は敵対組織・レユニオンの幹部で、その立ち居振る舞いは凍えるほど冷徹でありながら、凄惨な過去ゆえに胸の内に煮えたぎる憤怒を抱えている。そんな彼女との戦闘を、終始窒息しそうなほど重苦しい曲調で表現している。イントロの重低音に、吹雪を思わせる効果音と、神秘的だが不安を掻き立てるコーラスとが組み合わさって、絶望的で威圧的な響きを生み出す。焦らし続けてようやく1分7秒でストリングスとブラスが最大限の力を込めて協奏すると、さらに重く、さらに苦しく、美しいピアノの音色も相まって凄まじい悲愴感を醸す。厳酷な寒々しさに満ちた一曲である。

曲名の原題の「冻」の字は「凍」に該当するので、「永凍症」、英題も直訳ですね。ちなみにこの曲は6章の会話シーンとかでも用いられていて、その後のボス戦で流れる戦闘曲もシチュエーション共々すごく重々しくて好きです。あわせてどうぞ。

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