VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#895 『Chime』(星野康太/アーマード・コア ネクサス/PS2)

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フロムがおくる3D戦闘メカアクション・アーマードコアより、

星野康太作曲、ネクサスの『Chime』。

いくつかの性能テスト系のミッションで流れます。

アーマードコアシリーズの8作目として登場した本作。様々な企業が世界を支配し、各企業が身勝手に辺境を開拓するなか、新興企業ナービスが掘り当てた新資源をめぐり、レイヴン(傭兵)である主人公は戦争に巻き込まれることになる。EVOLUTIONとREVOLUTIONの2枚組のディスクから成り、前者はメインストーリー、後者は過去作のミッションをリメイクしたものを収録している。左右スティックを移動と視点操作、LRを攻撃ボタンとする新たな操作方法が導入されたほか、カスタマイズ関連でパーツが追加された。また、機体温度の仕様が変更され、通常のブーストでも熱量が上昇、気を付けなければすぐ熱暴走に陥る危険性がある。対戦バランスの粗やアリーナの削除なども目立つが、意欲的な要素が詰め込まれた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは齋藤司氏、末永浩一氏、高田征典氏、土屋昇平氏、星野康太氏。いずれも当時フロムに所属していたか現在もしている作曲家である。このうち星野氏(大半の作曲を単独で手がけている)と齋藤氏はACシリーズにはMOAから作曲に携わっているが、それ以外は初参加である。本作ではオリジナルの楽曲に加え、REVOLUTIONディスクで過去作の原曲・アレンジが収録されていて、スピーディーなエレクトロニックサウンドが揃っている。サウンドトラックは2枚組、前述のEVOLUTIONとREVOLUTIONに分かれている。

多目的演習施設で実施される「ミサイル性能テスト」「小型自律兵器性能テスト」「ECMミサイル性能テスト」および各ミッションの再テストで流れるのがこの曲である。テストであるため実戦ではないが、容赦なく襲い来るミサイルを回避したり兵器と模擬戦をしたりするなかで、いずれのミッションも戦場さながらの空気感を漂わせている。そこで流れるこの曲は、電気ピアノを主軸に据えたエレクトロニックサウンドで、終始淡々とミニマリスティックなフレーズを繰り返す。落ち着き払った曲調だが、1分過ぎから徐々に音量が増していくアコースティックなピアノの緻密なリズムパターンは、それとは裏腹にせわしげな焦燥感を煽り、本物の戦場でないからこそむしろ遠慮も気兼ねも慈悲もない、極度の緊張感を生み出す。プレッシャーに晒されながらも、独特な心地良さに満ちた一曲である。

どう説明したものでしょう……丸みを帯びた、一見温かく感じられるエレピの音色から始まり、徐々にアコピも加わって刺々しくなっていくけれど、でも思えば最初から無機的でつんと取り澄ましたエレクトロニカだったな、と思考が一回転して納得させられるような、そんな快い印象を受ける曲です。