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#901 『「哨」-ショウ-』(若草恵/幻世虚構・精霊機導弾 ELEMENTAL GEARBOLT/PS)

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アルファシステムがおくるガンシューティング・幻世虚構精霊機導弾より、

若草恵作曲、『「哨」-ショウ-』。SCENE 1で流れます。

リンダキューブなどで知られるアルファシステム製のファンタジーガンシューティングとして登場した本作。混血の一族・スキカへの惨い迫害が横行する世界を舞台に、ただスキカであるがゆえに殺された姉妹・ネルとシーナは、自己破壊を望むネットワークに死体を取り込まれ、戦闘機械となって王都へ攻め込むことになる。ガンコン(PSの周辺機器、銃型コントローラ)に対応したステージクリア型のシューティングで、貫通性能のある炎鳳、敵を追尾できる雷虎、連射可能な水蛇の三種類のショットを切り替えながら進めていく。トレードオフシステムにより、ひたすらスコアを溜めるか、スコアを消費してレベルアップして戦闘を有利に進めるかを選択できる仕組みで、射撃に慣れていなくても遊べるが、スコア稼ぎに専念して高得点を狙うこともできる。断片的にしか語られぬ幻想的で晦渋な世界観と相まって、趣深い魅力を持つ仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは若草恵氏。歌謡曲やテレビドラマ、映画の劇伴作曲などで幅広く活躍する、音楽制作会社イマジンに所属する作曲家である。ゲーム音楽を手がけるのは本作が初めてで、後にみんなのGOLF2にも携わるが、担当作品は現時点でその2作のみである。本作では悲劇的で退廃的な作風にあわせて、オーケストラを軸に、クワイアやオルガンなどもふんだんに用いた荘厳で艶麗な楽曲が揃っていて、美しくも不穏な、重苦しいサウンドをたっぷり堪能できる。また、曲名は漢字一文字に読み仮名付きという形式で統一されている。サウンドトラックにはクリア後に解禁されるボイスドラマも含めて楽曲が収録されている。

最初のステージであるSCENE 1「悲しき天使の降臨」で流れるのがこの曲である。大聖堂から始まり、家々が立ち並ぶ都市を突き進んでいくシーンを、押しつぶされんばかりの重厚感に満ちた鬱々とした曲調で彩る。バイオリンが奏でる主旋律は、震えて微振動するようなオーケストラの重低音に伴われて、思わず聴く者に恐怖を抱かせるほどの悲愴感を醸し出す。が、ちょうど1分になると、一気に鬱憤を晴らさんばかりの解放的な高音が響き渡る。癒されるのも束の間、1分15秒から再び禍々しさを取り戻し、音階を上り下りするアルペジオの伴奏がさらなる恐れと焦りを誘うと、その威圧的な空気感を最後まで保ち続ける。第1面にして本作の雰囲気を丸ごと凝縮したような一曲である。

ボス戦(『「轟」-トドロキ-』)がまたとても素敵で、この曲と同じ旋律を共有するからこそ、耳馴染みしつつもより重々しく、ますます気圧されるような魅力に満ちています。あとラスボス戦の曲(『「舞」-ブ-』)もこの曲のフレーズを含んでいて、破滅的な悲哀を湛えながら最終決戦を彩ってくれます。二つともあわせてどうぞ。

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