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#905 『攻撃』(辻横由佳/ファイアーエムブレム 烈火の剣/GBA)

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インテリジェントシステムズがおくるシミュレーションRPGファイアーエムブレムより、

辻横由佳作曲、烈火の剣の『攻撃』。自軍側の通常戦闘で流れます。

FEシリーズのうち、外伝を除き7作目、GBA向けの2作目として登場した本作。前作の20年前、親世代の活躍時期を舞台に、遊牧民の少女剣士・リンに助けられた行き倒れの旅人(プレイヤーの分身、後の軍師)は、行方不明の父を探す貴族の青年・エリウッドとその親友・ヘクトルと合流し、やがて陰謀の渦中に巻き込まれることになる。序章的な立ち位置のリン編と、本筋にあたるエリウッド編に分かれていて、クリア後はエリウッド編を別視点から遊べるヘクトル編も選択できる。大きな戦争ではなく相続争いや貴族の反乱などに焦点を置いたシナリオが特徴で、後のシリーズにおけるマイユニットの前身とも言える軍師が初登場した点も目新しい。難易度の緩和、支援会話の拡充、命中率の改善、新クラスの追加と既存の性能の見直しなど、細部にわたって調整が施されていて、意欲的な要素を入れつつ程よくバランスの取れた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは辻横由佳氏と春山沙樹氏。主に二人が作編曲をおこなっているが、喜多薫氏と松本敦子氏もサポートとして一部携わっている。フリーランスの辻横氏(以前は在籍していた)を除き、当時インテリジェントシステムズに所属していた作曲家たちである。前作まではFEシリーズでほぼ単独で作曲してきた辻横氏だが、本作では春山氏と共同で、互いに編曲し合うなどして曲づくりに励んだという。前作の前日譚という性質上、過去作からのアレンジも含まれていて、100曲近いボリュームたっぷりの楽曲が収録されている。サウンドトラックについては、アートブックの特典として一部楽曲を収録したCDのほか、15年の時を経て、前作と抱き合わせで5枚組に及ぶ完全版が登場した。

自軍が敵に攻撃を仕掛ける際の戦闘曲として流れるのがこの曲である。戦闘シーンは短く、ひとたび攻撃が終了したらマップ曲に切り替わるため、長々と聴けるものではないが、そうした実情に合わせたのか、曲冒頭で一気に攻勢をかけるような、力強く跳ね上がるイントロで始まる。開始から1秒足らずで絶好調の盛り上がりに達すると、血気盛んな勢いを保ちながら勇ましい旋律を紡いでいき、13秒頃からは音と音の間を切って短音を連発するスタッカートを多用することで、歯切れの良い躍動感を生み出す。続いて16分音符で緻密なリズムを奏で、最後に高音を掻き鳴らすと、32秒でループに突入する。戦闘開始とともに流れ始め、瞬時に昂揚感を駆り立て、颯爽と敵軍に一撃を加える、その一連の流れの気持ち良さを見事に表現した一曲である。

武器によりますが、最初の攻撃がヒットするタイミングが概ね1秒前後(イントロ明けの高音のドと重なる)、ヒット時の効果音も相まってすごくしっくりくる気がして、シンプルだけどこれ以上ないほどぴったりな曲名ですね。スマブラXでは伊藤賢治さんがアレンジされていて、音源の変化、パートの追加(ボス戦『挑まれた戦い』のフレーズ有)などいろいろありますが、割と原曲に忠実な印象を受けます。あわせてどうぞ。

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