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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#909 『ラグナの宮殿』(笹井隆司/時空の覇者 サ・ガ3 [完結編]/GB)

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スクウェアがおくるRPG・サガより、笹井隆司作曲、3の『ラグナの宮殿』。

ラストダンジョンのラグナ城で流れます。

サガシリーズのうち、初期のゲームボーイ三部作の完結編にあたる本作。奇妙な水瓶の出現により大量の水と魔物たちが押し寄せ、水没せんとする世界を舞台に、滅びの未来からやってきた三人の子どもたちが時空を越えた冒険に出ることになる。現在、過去、未来、異世界の四つの次元を股にかける壮大なシナリオが特徴で、独特な成長システムで知られるシリーズ作品としては珍しく、通常のレベルやMPの概念が導入されている。一方で、一度選んだ種族を変えられなかった前作とは異なり、肉やパーツ次第で種族の変更が可能になり、育成の自由度が増した。全体的にオーソドックスなファンタジー然とした仕上がりで、後にシステムまわりに大幅にテコ入れしたリメイク版がDSに登場した。

本作の音楽を担当するのは笹井隆司氏と藤岡千尋氏。元クリスタルソフト所属のタッグで、藤岡氏は当時スクウェアに移籍したばかりながらも本作のプロデューサーを務めていて、笹井氏は楽曲制作時はスクウェア社員ではなかったが、開発終了後に入社することになる。リメイク版では笹井氏に加えて伊藤賢治氏も参加してアレンジや追加曲の作曲をおこなっている。前2作に携わっていた植松伸夫氏が不参加、それまでPCゲームでの曲づくりを中心に手がけてきた笹井氏にとってはGB音源が不慣れという状況下、短めの曲尺にベースライン重視の高密度な旋律を詰め込むことで、音楽人気の高いサガシリーズの看板を背負うにふさわしい上質なサウンドをつくり上げている。サウンドトラックについては、GB三部作の楽曲を収録した全曲集やBlu-ray映像付きのリバイバル盤が存在する。

ラグナ城、すべての元凶である最高神ラグナが待ち受けるラストダンジョンで流れるのがこの曲である。イントロの時点で、突き抜けるような高音の旋律と、細かく音程が上下する伴奏とが組み合わさることで、その印象深いフレーズが最終決戦に向けての焦燥感を煽り立てる。18秒からは分散和音(アルペジオ)を効果的に用いることで、シンプルながらも奥深いリズム感を生み出し、フレーズが終わる頃の30秒にはすでに次のループに突入する。短いながらも耳に残りやすく、ループを繰り返すたびにじりじりと緊張感のボルテージが上昇していくような感覚を味わえる一曲である。

この短さで何度もループするからこそ映える、GB音源の神髄みたいなものが詰め込まれていると思います。リメイク版に笹井さんのセルフアレンジがありますが、いろいろ手が加わっていてほぼ別曲のような感じです。あわせてどうぞ。

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