VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#913 『メニュー』(坂本慎一/あっぱれ!ゲートボール/PCE)

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ハドソンがおくるスポーツゲーム・あっぱれゲートボールより、

坂本慎一作曲、『メニュー』(仮称)。

モードセレクトなどのメニュー画面で流れます。上記動画の0:28から2:43まで。

ゲートボールを題材にした本作。一般的なルールに則って試合をおこなうアクションモード、同じく試合形式だがアクション性(ショットの強弱を目押しする要素)を取り除くなどして操作を簡略化したシミュレーションモード、戦術を練習するレクチャーモードの3種類から成る。ルールは実際の競技通り、赤組と白組、各5人のチームに分かれ、コート内の3つのゲートを順番に通過するようボールを打ち、最後にゴールポールにぶつけることであがり、先にチーム全員がゴールしたほうか、時間内に多く点数を獲得したほうが勝ちとなる。敵味方問わず自分のボールを他人のボールに当てる(タッチ)と、他人のボールを打つ権利を得られ(スパーク)、味方ならゲート通過や位置取りの手助けを、敵なら場外に吹っ飛ばして妨害をすることができる点も再現されている。CPU対戦では個性派揃いの12人の選手を選んでチームを編成、CPUの強さは町内大会レベルなど計5段階で調整できる。丁寧なルール解説と奥深い戦略性を兼ね備えた仕上がりとなっている。後にWiiバーチャルコンソールで配信されたほか、PCエンジンminiに収録された。

本作の音楽を担当するのは坂本慎一氏。スタッフロール等の詳細な記載はないが、インタビューやツイッターなどで氏本人が担当した旨を明かしている。当時ウエストンに所属していた作曲家で、一部の情報によるとウエストンは本作の開発に関わっているらしく、その縁で手がけたものと思われる。本作では一般的なゲートボールのイメージに寄り添うような穏やかな曲調のものが多く、シビアな駆け引きよりも平和的な側面を強調したサウンドが揃っている。曲数はすくないながらもスパークショット専用の曲が用意されたり、短いジングルや審判が発する効果音(台詞を模したノイズ)が複数種類あったりするなど、細かなこだわりが窺える。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

モードセレクトや試合設定(試合時間や出場選手の選択など)をおこなうメニュー画面で流れるのがこの曲である。和やかな曲が多い本作においては異彩を放つようなシリアスな曲調で、打音のみのイントロから始まり、リズム重視の旋律を紡いでいく。低音のベースと中音域の主旋律、小刻みな高音の伴奏が組み合わさることで、絶妙にバランスの良い三者三様の音色を奏でる。曲全体の音程がすこしずつ上昇することで試合に向けての緊張感を高めていき、ループするにあたって音程が元に戻っても、違和感なく緊張感が持続するようなテンションを保つ。試合前の引き締まった気分を見事に表現した一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。実際の競技はやったことないので断言はできませんが、なかなか再現性が高そうな感じはします。