VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#915 『うみのむこう』(小畑幹/ピカチュウげんきでちゅう/N64)

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アンブレラがおくる対話ゲーム・ピカチュウげんきでちゅうより、

小畑幹作曲、『うみのむこう』。スオウかいがんとスオウじまで流れます。

ニンテンドウ64のVRS(音声認識システム)対応作品で、ポケモンシリーズのスピンオフとして登場した本作。ピカチュウと会話して友達になって、一緒に遊んで交流を深めることになる。音声を認識できる専用のマイクを使って実際に話しかけることで、ピカチュウが喜んだりすねたり照れたりして、いろんな反応を見せてくれる画期的なゲーム性が特徴である。進めるうちに行動範囲が広がり、森で料理の材料を集める、水辺で釣りをする、海岸でスイカ割りをするなど、ピカチュウと一緒に様々なアトラクションを堪能できる。発展途上の技術を用いた実験的な、それでいてポケモンと友達になれる感覚を丁寧かつ真っすぐに表現した意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは小畑幹氏。アンブレラに所属する作曲家である。本作はアンブレラのデビュー作であるため、氏にとっては以前在籍していたセガから移籍して初めて担当した作品である。スタッフロールは役職なしで開発者の名前が羅列されているだけだが、氏自身が明かしたところによると、全楽曲と効果音の制作に加え、企画にも携わっているとのことである。本作では、友達になって一緒に遊ぶことがコンセプトのゲームらしく、明るく朗らかなサウンドが揃っていて、随所でメインテーマのフレーズを散りばめることで楽曲全体に統一感を持たせている。また、一部本編のメインテーマ(タイトル画面で流れるもの)のアレンジも存在する。サウンドトラックは未発売だが、ゲーム内にサウンドテストが完備されている。

イカ割りが楽しめるスオウかいがんと、宝探しが楽しめるスオウじまで流れるのがこの曲である。例に漏れずメインテーマ(『いつもいっしょ』)をベースにしていて、海の景観によく合う爽やかなハウス調にアレンジされている。ノリノリなシンセとパーカッションが紡ぐ軽快なリズムが心地良く、清涼感たっぷりのピアノが加わることで胸がすくような清々しさを生み出す。ところどころにサンバホイッスルティンバレスを思わせるラテン音楽風の楽器が入ると、ますます晴れやかな印象に磨きがかかる。海辺の遊びをとことん楽しく彩ってくれる一曲である。

一日遅れですがシリーズ25周年記念に(※記事執筆時)。メインテーマが抜群に良く、それを海っぽいイメージでアレンジしたこの曲も素敵ですね。『いつもいっしょ』、あわせてどうぞ。

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