VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#918 『Skyward Fire』(Michiel van den Bos/Unreal Tournament/PC)

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Epic GamesがおくるファーストパーソンシューティングUnreal Tournamentより、

Michiel van den Bos作曲、99の『Skyward Fire』。MazonとThe Lava Giantで流れます。

シングルプレイ主体のFPSUnrealの派生作品として、オンラインマルチに重きを置いた本作。労働者たちのはけ口として殺人が合法化され、娯楽のためのデスマッチが盛んな未来世界を舞台に、最も苛烈な大会であるGrand Tournamentに参加して戦い抜くことになる。周りがすべて敵のDeathmatch、そこにチーム戦の要素を加えたTeam Deathmatch、キル数より生存を重視したバトロワ形式のLast Man Standing、攻防の2チームに分かれてオブジェクト攻略(攻撃側は破壊したり解錠したりする/防衛側は阻止する)を目指すAssault、チーム戦で敵陣の旗を奪い合うCapture The Flag、チーム戦で点数を盗り合うDominationの主に6種類のゲームモードから成る。マルチプレイだけでなくステージクリア型のシングルプレイにも対応していて、様々なルールで熾烈な戦いを繰り広げることができる。スポーツ系アリーナシューターの金字塔として名高い名作である。

本作の音楽を担当するのはAlexander Brandon氏、Dan Gardopée氏、Peter Hajba氏、Kai-Eerik Komppa氏、Tero Kostermaa氏、Bryan Rudge氏、Andrew Sega氏、Michiel van den Bos氏。Brandon氏、Gardopée氏、Sega氏は当時、音楽制作チーム・Starlight Productionsに所属していた作曲家で、Rudge氏やvan den Bos氏と合わせてUnrealでの作曲経験がある。このうち本作ではアメリカ出身のBrandon氏とオランダ出身のvan den Bos氏が中心となって作曲していて、ハードSFな世界観でのFPSにふさわしい硬派なテクノやアンビエント系の楽曲が揃っている。サウンドトラックは本作単体では未発売だが、シリーズ楽曲を収録したCDに本作の楽曲の一部が含まれる。

AssaultモードのMazon Fortressと、Capture The FlagモードのThe Lava Giantで流れるのがこの曲である。Mazonは城砦内部のクリスタルを破壊/防衛するマップ、The Lava Giantは周囲をマグマに囲まれた射線の通りやすい広大なマップ、その両方で展開する死闘をミニマルテクノ的な曲調で彩る。これといったメロディーラインが不在であるなかで、スタンダードな四つ打ちのリズムが静かに昂揚感を駆り立て、起伏は乏しいながらも徐々に音数が増していく。1分25秒あたりからはピアノの低音も加わるが、間もなくパーカッションパートが沈黙して30秒間ほどイントロ並みの静謐さに逆戻り、と思いきや再びストイックなビートを刻み始めて戦意を高めてくれる。徹底して戦闘に集中できるような落ち着きを持った一曲である。

曲名の意味は空に向かって発砲することです。こういう無機的な冷徹さ、いいですよね。