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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#932 『草原の月』(甘茶/フリー素材)

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ノスタルジアで配布されているフリー素材より、

甘茶作曲、『草原の月』。ひとりぼっち惑星などで使われています。

商用・非商用問わず著作権フリーの音楽素材が無料で公開されているノスタルジア。管理人の甘茶氏により、メインで運営する素材サイト・甘茶の音楽工房の別館として、主にアコースティック系の楽曲を各種取り揃えている。ファイル形式はmp3、曲は「楽しい」「暗い」などのイメージ別にリストアップされているほか、ジャンル(楽器)別に「ピアノ」「オルゴール」などにも分かれていて、好みの音楽を探し出して試聴とダウンロードできる仕組みとなっている。

ノスタルジアの素材のなかには、音楽工房からのアレンジや、曲名の一部を共有するシリーズ曲のようなものがあり、この『草原の月』は同じく「悲しい」「ピアノ」に分類される『草原の風』と『草原の雨』の姉妹曲と思われる。『風』はミドルテンポで舞い踊るような華やかさと切なさがあり、『雨』はややスローテンポでフレーズの繰り返しが多め、いずれも四拍子だが、『月』のみ拍子が異なる。有名どころで言えば、ところにょり氏が制作した放置系スマホアプリ・ひとりぼっち惑星において、メインBGMとして採用された『雨』に加え、『月』がジンコウチノウ戦争のシーンで流れる。同作はひとがもう存在しないにもかかわらず延々とジンコウチノウたちが戦争し合う惑星を舞台に、機械の残骸を回収してアンテナをつくり、宇宙のどこかにいる誰かの声を受信するのが目的である。肝となるジンコウチノウ戦争は完全なオート進行、部品を集める以外には見守ることしかできず、そうした漠然とした虚無感が漂う場面をこの曲が彩る。

高音が印象的なイントロから始まり、6小節ほど、伴奏がすこしずつ下降しながらも同じ主旋律を淡々と奏で続ける。イントロ明けには物憂げなメロディーラインが響き渡り、分散和音による伴奏が流麗さを印象付ける。悲しげだが、それでもひたすら先へ先へと進んでいくような、途方もない寂寥感を伴って曲が紡がれていくと、1分36秒ですこし毛色が変わって明るくなったと思うのも束の間、やはり依然としてメランコリックなまま、曲後半も深い哀愁を誘う。美しく聴き心地は抜群だが、思わず月を見上げて溜め息をつきたくなるような気分にさせてくれる一曲である。

ひとりぼっち惑星の使用方法だと一応戦闘曲ってことになりますが、良い選曲センスですね。『草原の風』と『雨』、それぞれあわせてどうぞ。

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