VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#938 『cutting edge』(佐藤智彦/鋼の錬金術師 翔べない天使/PS2)

www.youtube.com

荒川弘著の少年漫画「鋼の錬金術師」を原作とする、

ラクジンがおくるアクションRPG・翔べない天使より、

佐藤智彦作曲、『cutting edge』。ラスボス戦で流れます。

錬金術師の兄弟の奮闘を描く「鋼の錬金術師」の初のゲーム化作品にあたる本作。セントラルに向かうべく列車に乗るも賊がジャックして脱線、立往生を余儀なくされたエドとアルは、高名な錬金術師を父に持つ少女・アルモニと出会い、彼女をめぐる悲運に巻き込まれるうち、やがて錬金術と命の重みを知ることになる。原作の序盤、3巻の帰郷~中央到着の間を描いたオリジナルのサイドストーリーが紡がれ、要所要所にアニメシーンが挿入される。戦闘では体術のみならず武器や兵器を錬成して戦い、3Dアクションの形式で原作同様の錬金術バトルが楽しめる。原作の世界観を踏襲したビターな物語が特徴で、ハガレンPS2三部作の第1作として手堅くまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは笠井勲氏、佐藤智彦氏、すえひろまこと(末廣誠)氏、谷謙治氏。いずれもラクジンのサウンドチーム・Racjin-Radixに所属する作曲家である(すえひろ氏のみ離脱済み)。挿入歌もあわせて担当していて、四名ともPS2三部作にはすべて携わっている。このうち佐藤氏がサウンドプロデューサーを務めている。本作では主にシリアスな作風に沿ったオーケストラやロックなどの重苦しめな楽曲が揃えられていて、アニメの主題歌『消せない罪』のリミックス(ボーカル入り)も含まれる。サウンドトラックはボーカル曲も込みで収録されているが、未収録のものもある。

ラスボス戦(最後のイベント戦闘ではなくキメラと戦うほうを指すので、厳密には一つ前)で流れるのがこの曲である。叫び声と禍々しい光に包まれた凄絶なアニメシーンに続いて、イントロから炸裂する速打ちドラムで決戦のテンションを高める。12秒から荒く激しいエレキギターの主旋律が入ると、力いっぱい猛り立つ轟音を響かせる。53秒頃になるとギターもドラムもフルスロットルで暴れ出し、嵐のような盛り上がりを見せつける。ようやくフレーズが収まる1分9秒あたりで束の間の静けさを享受した後、再び荒れ狂う轟音が押し寄せ、最後まで恐ろしい勢いで駆け抜ける。徹底して猛烈な情熱に満ちた一曲である。

ちなみにこの曲はループしない仕様で、曲が終わったらすこし間を置いてまた冒頭から再生されます。最後のイベント戦闘は主題歌が流れるので、展開も相まって印象深い見せ場になっていますが、インストで突っ走るこの曲もなかなかの迫力ですね。