サミーがおくる対戦型レースゲーム・レーシングルーヴィーより、
ヲノサトル作曲、『NIGHT CHASE』。レースBGMの一つ。
レースゲーム用コントローラ・ネジコンに対応したサミー製のオリジナル作品として登場した本作。隠し解禁を含む11種のマシンを駆って、初級のJUNGLE、中級のHIGHWAY、上級のALPINEの3つのコースで速さを競うことになる。コース数こそすくないが、いずれも美麗かつ細部までつくり込まれたステージデザインが特徴で、通常のレースモードに加えてトレース対戦やカートリッジ対戦など、ソロプレイでもメモリーカードなどを使って疑似的な対人戦を繰り広げられる。マシンの挙動については、特にドリフトの制御に癖があり、復帰するにはアクセルをオンに切り替える必要がある。コントローラのコンフィグやBGMの選択といった基礎的な要素に加え、画面サイズの調整機能として16:9のワイド画面にも対応していて、オプション面が充実している。やや地味だが随所でセンスが光る仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのはヲノサトル氏。「電子音響とムード音楽の融合」を掲げる現代音楽の作曲家で、芸術ユニット・明和電機の足踏みオルガン奏者でもあり、バンドやCMの音楽制作、映画や舞台の劇伴など、様々な音楽シーンで活躍している。ゲーム音楽方面では90年代後半にかけてクイズゲームやピンボールなどを手がけたことがあるが、レースゲームを担当するのはおそらく本作が初めてである。また、サックス奏者として田中邦和氏を起用している。本作では音楽が大きな目玉要素であり、ジャズやテクノ、プログレなど、ゲーム名に違わぬグルーヴィーなサウンドが揃っている。サウンドトラックは未発売だが、ゲームの取扱説明書のなかにさながらライナーノーツのように楽曲の説明文が用意されている。
自由に選べるレースBGMのうちの一つがこの曲である。「ピアノ、サックス、オルガン＋ハウスビートによるスイング感あふれる、ネオビッグバンドジャズ」という説明が示す通り、非常にスタイリッシュでハイセンスなジャズナンバーに仕上がっている。周期的に鳴らされるフィンガースナップによる小気味よいビートに、官能的なピアノとサックスが重なることで、恍惚なリズム感を生み出す。1分過ぎでようやくメインメロディーが始まると、その艶やかな音使いが束の間、忘我の境地へと誘い、再び間奏を経て今度はピアノの即興が奏でられた後、主役をサックスに交代してまたもや即興風の旋律が紡がれる。曲後半にはオルガンの見せ場もあり、うっとりするような三つ巴のアンサンブルを魅せつけてくれる。トップスピードで疾走する快感をジャズで表現した一曲である。
カタカナ交じりの小粋な曲解説って何とも言えず魅力的ですよね。同じくサックスをフィーチャーした曲で、『RAINBOW SKY』もおすすめです。あわせてどうぞ。
