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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#023 『prime #7』(坂本英城/無限回廊/PSP)

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SCEがおくる錯視パズルゲーム・無限回廊より、

坂本英城作曲、『prime #7』。ゲーム中でランダム再生される曲のうちの一つ。

さながら騙し絵のようなソリッドな世界を舞台に、色を排したモノクロのパズルを解いていく本作。ステージを回転させながらキャストと呼ばれる動く人形を誘導し、目の錯覚をうまく使いこなしてクリアを目指していくことになる。主観的移動・着地・存在・不在・跳躍といった五つの錯視を状況に応じて使い分け、五分という限られた制限時間でいかにうまく行動するかが鍵となる。ひたすら淡泊だが、頭を使う仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは坂本英城氏。音楽制作会社ノイジークロークの代表を務める作曲家である。本作ではその徹底されたモノトーンの世界を彩るにあたって、全編にわたって優雅でアンニュイな弦楽四重奏(バイオリン×2、ヴィオラ、チェロ)が用いられていて、クラシック音楽に通ずる芸術性を持つ楽曲が揃っている。また、特定のシーンに楽曲が結びついているわけではなく、全曲ランダムで再生される仕組みとなっている。サウンドトラックはオリジナル音源を収録したもののほか、オーケストラやロックアレンジされたものも存在する。

本作の曲はどれも素数をモチーフとしていて、『prime #p』(pは任意の素数)という題名で統一されているが、そのうち4番目の素数を冠するのがこの曲である。無伴奏バイオリンによるイントロから始まり、隣り合う音を階段のように上り下りしたのち、麗らかなアルペジオとともにやおらヴィオラとチェロ、セカンドバイオリンとが加わる。ときに仲良く和音を奏で、ときに競い合うかのごとく追いかけっこをしながら展開する旋律は、色なき世界で色彩豊かに絡み合う。最後まで聴き終えた暁には、さながら数式を解いたときのような独特な快感をもたらしてくれる一曲である。

初めは物憂げなのに、紆余曲折あって最後は有終の美を飾って綺麗に収束していくさまが見事ですね。