VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#048 『つきのうた』(Pixel/洞窟物語/PC)

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開発室Pixelがおくる2Dアクション・洞窟物語より、

Pixel(天谷大輔)作曲、『つきのうた』。外壁ステージで流れます。

レトロ志向のフリーゲームとして登場した本作。記憶喪失の人型ロボットである主人公は、彼を取り巻くミミガーと呼ばれる異種族、地上からやってきたとされる人間との出会いを通じて、やがて己自身と世界の仕組みを知ることになる。ファミコン風の温かみのあるグラフィックに、歯応えのある謎解き要素、さらには多種多様な武器を扱って戦うシューティング的な側面もあり、主人公の行動次第で物語が大きく分岐するマルチエンディング制が採用されているも特徴である。その作り込まれた世界観と豊富なやり込み・周回要素とが相まって、国産フリーゲームの金字塔とも言われる屈指の認知度を誇る仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはPixelこと天谷大輔氏。作曲のみならず、プログラミング、グラフィック、シナリオ、そのすべてを単独で手がけている。本作の楽曲はいずれも、氏本人が本作のためにつくった音楽プログラム・ピストンコラージュを通して作曲されている。オルガーニャと呼ばれる独自音源を用いることで、独特なレトロ感と郷愁が滲む耳心地の良いサウンドを生み出している。サウンドトラックはzipファイル形式で氏の公式サイトにて無償公開されている。

外壁ステージで流れるのがこの曲である。物語も終盤に差し掛かる頃に訪れるステージで、満月の夜空を背景に、月明かりに照らされながらひたすらと外壁をのぼることになる。そうした幻想的なシチュエーションを、柔らかい電子音が紡ぐシンプルなメロディーラインで表現している。ゆったりとした悲しげな曲調と、それでいて勇ましく、覚悟に満ちたような旋律が、静謐なステージをあくまでも静かに優しく彩ってくれる。簡素であるからこそいっそう素朴な味わい深さを感じさせる一曲である。

洞窟物語を知ったのはこの曲がきっかけ、という人も相当数いるかも。かくいう私もそうです。