VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#053 『たたかいの刻』(なるけみちこ/ノーラと刻の工房 霧の森の魔女/NDS)

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アトラスがおくる新生マイスターRPGノーラと刻の工房より、

なるけみちこ作曲、『たたかいの刻』(刻の読みは「とき」)。通常戦闘で流れます。

世界樹の迷宮シリーズとアトリエシリーズの双方のスタッフが開発に携わっている本作。霧の森の魔女が住まうという伝説が伝わる小さな町・テンペリナを舞台に、そこにやってきた見習い導刻術師のノーラは、ひょんなことから魔女に間違われてしまい、誤解を解くべく町のみんなの依頼をこなし、徐々に信頼を取り戻していくことになる。北欧をモチーフとした世界観のもと、ほのぼのと見せかけて硬派な難易度を誇るスリリングなスローライフを繰り広げていく。採取した材料を基に物質の時間を操作してアイテムを自分好みに生成する導刻術のシステムが特徴である。戦闘システムはごく簡素なターン制コマンドバトルだが、気を抜けば全滅し兼ねないシビアなバランスに調整されている。独特な魅力と歯応えを持つ仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはなるけみちこ氏。ワイルドアームズシリーズなどで知られるフリーランスの作曲家である。氏の得意とする軽妙な節回しは、本作でも遺憾なく発揮され、世界樹らしさ、アトリエらしさに加えて、女史らしさも堪能できる仕上がりとなっている。ケルトともアイリッシュとも定義し切れないような一癖ある楽曲群は、いずれも世界観にマッチした良曲揃いである。サウンドトラックは麻生かほ里氏が歌い上げる主題歌も含めて収録されている。

通常戦闘で流れるのがこの曲である。長い時間繰り返し聴くことになるという性質を活かして、スタンダードな四拍子を用いつつ、非常に耳に残りやすい癖のあるメロディーラインが特徴である。イントロでインパクトのあるストリングスを据え、一気に引き込まれるような勢いを整えると、続いて奏でられる旋律は明るくも勇ましく響き渡る。ピアノやギター、アコーディオンを思わせる音色の優しい間奏を取り入れつつ、ループ直前の、スタッカートをふんだんに効かせて盛り上げる部分に、切れ目なく見事に繋がっていく。シンプルだが油断大敵な通常戦闘にふさわしい、適度な緊張感を漂わせた一曲である。

弦楽器が踊っているような感じがして、聴いているだけで楽しい気分になりますね。