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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#166 『堕ちた楽園』(林茂樹/エクシズ・フォルス/PSP)

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スティングがおくるファンタジーRPG・エクシズフォルスより、

林茂樹作曲、『堕ちた楽園』。死滅都市アルテアで流れます。

リヴィエラをはじめとするDept. Heaven Episodesシリーズで知られるスティングの完全新作として、発売元をアトラスとして登場した本作。昼と夜、光と闇に隔たれた世界・ベルジュを舞台に、二人の主人公・セシリアとレーヴァントが世界を揺るがす冒険に出ることになる。開始時にセシリア編とレーヴァント編のどちらかを選択するが、やがて二つの物語は一つに収束し、そこからさらに結末が分岐することで、世界を救うも壊すもプレイヤーの行動次第である。戦闘はじっくり戦略を練るオーソドックスなコマンド選択式で、RPを消費する代わりに使用無制限の神器と、定められた回数のみ使用可能な霊器の二種類の武器を使いこなすことになる。王道ながら丁寧につくり込まれた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは林茂樹氏。スティング所属の作曲家で、D.H.Eシリーズを筆頭に多くのスティング製の作品を担当してきて、スティングサウンドを語るうえで欠かせない存在である。本作では光と闇というコンセプトに基づいて、二人の主人公のそれぞれのバックグラウンドを反映するような、明暗を意識したファンタジックな曲調が多い。サウンドトラックは2枚組で、セシリアディスクとレーヴァントディスクに分かれて収録されている。

セシリア編、レーヴァント編どちらを選んでも訪れることになる死滅都市アルテアは、不幸な事故により退廃してしまった理術都市である。理術とは本作における科学のようなもので、かつて先進都市であったこの地で流れるこの曲は、栄枯盛衰の理を色濃く表現している。終末的な悲しみを帯びたピアノの静謐な音色と、死してなお優雅さを忘れないストリングスの情熱的な音色が重なり合って、堕落した廃墟に息づくかすかな生命の息吹を感じさせる。滅びの地を思わせる繊細な美しさと、かつての栄光を思わせる壮大な美しさ、二つの美しさが融合した一曲である。

廃墟とピアノは相性抜群ですね。荒寥とした空気感がたまらないです。