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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#183 『風が呼ぶ、蒼穹のシェバト』(光田康典/ゼノギアス/PS)

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スクウェアがおくる新世代サイバネティクスRPGゼノギアスより、

光田康典作曲、『風が呼ぶ、蒼穹のシェバト』。空中に浮かぶシェバト王国の曲。

スクウェアによる、FFや聖剣伝説とは異なる可能性の完全新作として登場した本作。神話の時代から幾多の戦乱が続く世界を舞台に、戦争とは無縁の辺境の村で暮らしていた記憶喪失の青年・フェイは、人型戦闘兵器・ギアの襲撃によって突然村を焼き尽くされ、自身も応戦すべくギアに乗り組むも暴走、居場所を失って村を離れ、旅先で出会った少女・エリィとともに複雑な運命に巻き込まれていくことになる。SFや巨大ロボットなどのサブカルチャーを軸に、宗教、哲学、オカルト、科学など、あらゆる分野から影響を受けた斬新かつ晦渋な世界観が特徴で、戦闘は生身で戦うタイプとギアに搭乗して戦うタイプの二種類存在する。圧倒的な密度を誇る特異なゲーム性が今なお鮮烈な印象を与え続ける異色の仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは光田康典氏。当時スクウェアに所属していた作曲家で、本作は在籍時代の最後の担当作品である。退社後もゼノシリーズには定期的に携わっていていて、その原点となる本作の楽曲を、ボーカル曲の作曲も含めてすべて単独で手がけている。壮大で幻想的でどこか物憂げでもある楽曲の数々が、本作の独創的な作風をさらに深化させるような魅力に満ちている。サウンドトラックはオリジナル盤のほか、複数のアレンジアルバムが存在している。

天空にたゆたうシェバト王国、その首都アウラ・エーペイルにて流れるのがこの曲である。きらきらと輝きを放ち続ける金属音に、清涼感あふれる笛の音と穏やかなコーラスが混ざり合って、透明感に満ちた癒しと神秘的な感動をもたらす。その洗練された音使いは、思わず安堵の溜め息を漏らしたくなるほど美しく儚く、なおかつ脆さをも感じさせる。空中都市ならではの浮遊感を色濃く滲ませた一曲である。

曲名のセンスも詩的で素敵ですよね。シェバトはヘブライ語安息日からきているのでしょうか。