VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#187 『黄泉の華』(楠雅弘/ぐわんげ/AC)

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ケイブがおくる縦スクロールシューティング・ぐわんげより、

楠雅弘作曲、『黄泉の華』。3面道中で流れます。

弾幕シューティングでは珍しく自機が徒歩で移動する陸戦のプレイスタイルを取っている本作。室町末期の東の国を舞台に、強力な力を持つ式神使いたちは、式を宿した日から数え一年で命を吸われるという言い伝えからわが身を救うべく、黄泉にそびえる獄門山の神を討つことになる。全編緻密に描き込まれた和の世界観と、ホラーテイストとも言える生々しいモンスターグラフィックが特徴で、縦スクロールと言えど状況に応じて横や斜めにもスクロールするなど、随所に変則的なシステムが目立つ。なかでも式神を用いる操作方法は、式神を移動させている間は自機の動きが大幅に制限されるなど、癖が強いことで知られていて、ケイブシューおなじみの歯応えのある難易度を堪能できる。後にXBLAに移植された。

本作の音楽を担当するのは楠雅弘氏。当時、音楽制作会社ツーファイブに所属していた作曲家で、ケイブ製の作品では前年にエスプレイドにて全曲を作曲した経歴を持つ。エスプレイドの近未来風なテクノサウンドから一転、本作では和楽器をふんだんに使った古式ゆかしい繊細な楽曲が多い。どこかダークでグロテスクな雰囲気にふさわしいおどろおどろしさと、シューティングならではの爽やかさが、鮮やかに描き出されている。サウンドトラックは長らく未発売だったが、エスプレイドと抱き合わせのオリジナル盤のほか、本作の楽曲のオリジナル・アレンジ両方を完備したアルバムも存在する。

3面道中にて、怒涛の勢いで押し寄せる弾幕に、轟き渡る爆撃音、そんななかでひっそりと奏でられるこの曲は、幼子の愛らしくも不気味な笑い声から始まる雅な一曲である。琴を中心にした寂寥感たっぷりの音使いは、黄泉ということばから想起される底知れぬ恐ろしさと、華ということばから想起される計り知れぬ美しさを、一挙に表現している。漢字が違うものの同じく花を題名に冠した1面の曲『花吹雪』と比べると、両方とも笛の音が共通して流れるなか、『花吹雪』がピアノを主調とした生気あふれる仕上がりであるのに対し、この曲は死すら慈しむ優艶さを有している。

優艶とか妖艶とか濃艶という表現がよく似合いますね。『花吹雪』もあわせてどうぞ。

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