VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#230 『Brilliant Streamer』(土屋俊輔/アナザーエデン 時空を超える猫/iOS・And)

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Wright Flyer Studiosがおくるシングルプレイ専用スマートフォンRPG

アナザーエデンより、土屋俊輔作曲、『Brilliant Streamer』。

現代でのボス戦で流れます。

クロノトリガーシナリオライターとして知られる加藤正人氏と、同じくクロノトリガーの作曲家として知られる光田康典氏のタッグでおくられる本作。バルオキー村に暮らす警備隊の青年・アルドは、突如さらわれてしまった妹・フィーネの足跡をたどるうちに、時空の穴に飲まれて過去と現代と未来を股にかけて大冒険に出ることになる。スマホ作品にしては珍しくソーシャル要素を排除し、純粋なシングルプレイに徹している。壮大かつ丁寧に描き込まれた物語と、濃密なボリュームが特徴で、アビリティの解放やクラスチェンジなど、RPGの主要な成長システムが完備されている。メインストーリー以外にも外伝やコラボシナリオなど多面的に物語を掘り下げる要素が充実していて、スマホでしっかりと王道な冒険譚を楽しめる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは光田康典氏、土屋俊輔氏、Mariam Abounnasr氏。いずれも音楽制作会社プロキオン・スタジオ(光田氏が代表を務める)に所属する作曲家で、光田氏はメインテーマの作曲など担当する楽曲はごく一部に留まっているなか、主に土屋氏とAbounnasr氏が中心となってサウンドをつくりあげている。Abounnasr氏は本作以前には蒼き革命のヴァルキュリアで編曲とオーケストレーションを担った経験があるが、ゲームの作曲は初めてである。音楽が目玉要素として扱われている本作では、オーケストラや民族楽器による質の高い楽曲群が揃っている。また、当初は上記三名で作曲していたが、最近ではWright Flyer Studios所属の山上毅氏や林茂樹氏ら、INSPION所属の土屋裕一氏らも作曲に加わっている。サウンドトラックは複数枚に分かれて発売されている。

現代におけるボス戦で流れるのがこの曲である。現代とは主人公にとっての馴染みの時間軸で、AD300年、建国から300年の節目となる時代を指す。ボス戦を彩るにあたって、勢いあふれるストリングスから始まり、序盤から激しく掻き鳴らされるエレキギターの伴奏や、ピアノとハープの美しい演奏を交えながら曲が展開していく。終始エネルギッシュな気迫に満ちているなかで、50秒過ぎからのサビではさらに力強く、バイオリンの独壇場とすら言える絶頂の盛り上がりをみせる。その伸びやかな旋律は、1分24秒以降を中心に目一杯の高音を奏でた後、次のループに向けて再始動する。一切出し惜しみしない全力全開の昂揚感を漂わせる一曲である。

記事執筆当時からすこし作曲家まわりの事情が変わったようなので、内容を追記・更新しました。