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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#269 『Malicious Roses』(阿知波大輔/よるのないくに/PS3・PS4・PSV)

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ガストがおくる美少女×従魔×RPGよるのないくにより、阿知波大輔作曲、

『Malicious Roses』。旧伯爵邸ローズガーデンで流れます。

大正もののけ異聞録以来12年ぶりのガスト完全新作として登場した本作。中世ヨーロッパを思わせる時代背景のもと、吸血の力を得て人にあらざる者となった半妖の少女・アーナスは、世界を救うための生贄に選定された幼馴染の聖女・リュリーティスを守るべく、運命に抗うことになる。戦闘システムは従魔と呼ばれる使い魔を操りながら戦うハクスラ系のもので、四種類の従魔を編成し、組み合わせ次第でアーナス自身が変身してパワーアップすることもできる。エンディングが複数に分岐する儚く退廃的なシナリオと、美少女が織り成す瑞々しい人間模様とが特徴的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは浅野隼人氏、阿知波大輔氏、柳川和樹氏。いずれも当時ガストに所属していた作曲家である。三名とも続編の2でも引き続き作曲を手がけている。ゴシック調のダークファンタジーを彩るにあたって、本作では陰鬱なオーケストラや神秘的なコーラスはもちろん、スタイリッシュで派手なロックサウンドまで揃っている。オリジナルサウンドトラックはプレミアムボックス限定特典で、単体で入手することはできないが、それとは別にサウンドチーム選りすぐりの楽曲に加え、新規アレンジを収録したセレクションCDが存在する。

初めて本格的な探索に出向くことになる旧伯爵邸ローズガーデンは、美しく植えられた樹木が特徴の、かつてとある伯爵の邸宅だった巨大な庭園である。そこで流れるこの曲は、ハープシコードの華やかな音色と妖艶なコーラスによるイントロによって、まずメランコリックな空気を整える。その後、20秒あたりでエレキギターが登場し、40秒過ぎで満を持して主旋律が奏でられると、その悲壮なメロディーラインが退廃的な雰囲気に磨きをかける。邪悪さのなかに繊細さと力強さが両立した雄勁な一曲である。

ストレートにかっこいいけど、どこか冷たくて棘があるような感じもして、「悪意のある薔薇」という曲名がよく合っていますね。