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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#273 『スタジアム・コロシアムのセミファイナルなど』(多和田吏/ポケモンコロシアム/GC)

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ジニアスソノリティがおくる対戦RPGポケモンコロシアムより、

多和田吏作曲、『スタジアム・コロシアムのセミファイナルなど』。

通称『君は戦いに何を見るか』で、トーナメントでの準決勝戦等で流れます。

ポケモンの本家シリーズのうち、ルビー・サファイアの発売からちょうど一年後に登場したゲームキューブ向けのスピンオフにあたる本作。GBAと連動することで対戦ツールとして運用できるほか、専用のストーリーモードでは、悪の組織・スナッチ団の元団員である主人公が、洗脳されて暴走するダークポケモンを戦闘中にゲット(スナッチ)し、心を鎮める(リライブ)ことで、スナッチ団の野望に立ち向かっていくことになる。全編を通してポケモン二体を同時に戦わせるダブルバトルを採用していて、本家の世界観とはかけ離れたハードでアングラな作風を堪能できる。外伝ならではの異色の世界観を楽しめる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは多和田吏氏。ジニアス・ソノリティの設立者の一人で、同社の作品の作曲に多く携わっている。氏は続編のXDや流れを汲むバトレボなどでもすべての楽曲を単独で担当している。本作ではダークファンタジー寄りのシリアスな楽曲が大半を占めていて、ことに戦闘曲はいずれも気合の入った仕上がりとなっている。サウンドトラック等、曲名を確認できる媒体は存在しないが、着メロで配信されていた楽曲など、一部正式曲名が判明しているものおよび通名が定着しているものがある。

勝ち抜き100連戦のバトル山での後半戦やトーナメントでの準決勝などで流れるのがこの曲である。じりじりと焦らすようなギターリフを駆使したイントロで始まり、20秒を過ぎたあたり、両者ポケモンを出し終えていざ戦いの幕が開く頃に主旋律の火蓋が切られる。きらり煌めく音色が特徴的な伴奏の上を、ブラス、ストリングス、エレキギターが颯爽と駆け抜けていく。複数の楽器で代わる代わるメロディーを反復することで、緊張感と昂揚感を最大限に高める。1分12秒ではギターのラストフレーズに被せるように即興風のシンセが加わり、しばらくの間、気持ち良い高音を響かせて、次のループに至るまでの間奏部分を豪快に彩る。絶対に負けるわけにはいかないという痛切な決意を固めさせてくれる力強い一曲である。

コロシアムのようなダークサイドを描いたポケモン作品、もっと出てくれるといいな、と常々思っています。