VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#295 『Far Journey』(工藤吉三/雷電V/XOne)

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MOSSがおくる縦スクロールシューティング・雷電より、

工藤吉三作曲、5の『Far Journey』。7面道中で流れます。

雷電シリーズのうち、初の家庭用作品として登場した本作。奇妙な流星群の飛来をきっかけに、兵器にクリスタルが付着して暴走する現象・クリスタル汚染による被害が深刻化するなか、対クリスタル浄化部隊の一員となって脅威に立ち向かうことになる。従来の作品では描写がすくなく淡泊だったシナリオだが、本作ではステージ分岐するストーリーモードを採用している。システム面では、体力制やリトライ機能を導入することで今までとは異なる駆け引きをつくり出している。ネットワークに連動して他のプレイヤーを応援することができるチアーシステムも特徴的で、シリーズならではの堅実さと、家庭用機進出を果たしたことによる意欲的なゲーム性がうまく融合している。

本作の音楽を担当するのは工藤吉三氏。音楽制作会社ベイシスケイプに所属する作曲家である。外伝にあたるライデンファイターズも含めてほぼすべての作品に長らく携わってきた佐藤豪氏にかわり、本作では工藤氏が全曲を単独で作曲している。氏の持ち味であるオーケストラとロックを効果的に組み合わせたシンフォニックサウンドが全編を通して採用されていて、本作においてはステージの尺にあわせて曲がつくられているため、原則としていずれの楽曲もループしない仕様となっている。なかには十分近い大作もあり、雷電サウンドの新しい可能性を切り拓く珠玉の名曲揃いとなっている。サウンドトラックは初回限定盤に付属されている。

全8面中7面、つまりラス前の道中で流れるのがこの曲である。第1シーンで緑が生い茂る森を抜け、急峻な斜面を高速で駆け登った後、第2シーンでは高度を上げつつ遥か天空にまで伸びる軌条に沿って宇宙へと向かい、第3シーンでは青い惑星を背景に、辺り一面に散らばった残骸を尻目に進んでいく。そうした言語に絶するドラスティックな旅路を彩るこの曲は、イントロからすでに最高潮の盛り上がりを見せ、ピアノもストリングスもエレキギターも一緒くたになって奏でられるアップテンポな曲調がしばらく続く。3分50秒あたりでエレキギターが異常をきたすと、4分以降はストリングスがさながら身震いをしているかのような、切迫した空気感が漂い始める。4分40秒手前になるとようやく本調子に戻り、押し寄せる轟音の波が心地良いグルーヴをもたらす。が、第3シーン突入と同時に不意に5分55秒あたりから静寂が訪れると、宇宙空間の神秘を丸ごと写し取ったような、アンビエントに近しい感情を押し殺した曲調へと変化する。それまでの印象をすべて覆し、差し迫る最終局面への不安を大胆に煽る。曲のなかにストーリー性が凝縮された壮大な一曲である。

いつ聴いても最初から最後まで心底痺れますね。