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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#318 『はじまりの道標』(志方あきこ/シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~/PSV)

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ガストがおくる7次元コミュニケーションゲーム・シェルノサージュより、

志方あきこ作曲、『はじまりの道標』。第一の扉の先の夢セカイで流れます。

ガストの異世界SF・サージュコンチェルトシリーズの第1弾として登場した本作。暴れ狂う太陽の影響で死に絶えんとする惑星・ラシェーラを舞台に、記憶喪失の少女・イオンと次元の壁を越えて交流を深めることになる。プレイヤーはイオンと日常的な触れ合いを楽しみつつ、彼女の精神世界、通称夢セカイに入り込むことで失われた記憶を取り戻していく。次元を越えたリアルタイムなコミュニケーションに焦点を当てていることから、現実の延長線上でイオンとじっくり向き合う長丁場なゲーム性が特徴である。非常に緻密な世界観と、単なるフィクションではなく別次元に実在していると感じさせる臨場感が印象的な意欲作に仕上がっている。当初はオンライン専用タイトルとして1話ずつDLC形式で配信していく特殊な販売形式をとっていたが、後にDLC要素をすべて搭載したオフラインの完全版が登場した。また、オフライン版のリマスターにあたるDXがPS4、スイッチ、Steam向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは志方あきこ氏、下田祐氏、柳川和樹氏、SSS-Solid State Signal-OOOPS TEAM WEEDSらをはじめとする複数の作曲家たち。本作は同じくガスト製のアルトネリコシリーズと深く関連していて、おなじみの詩魔法は本作でも重要な役割を果たしていることから、ボーカル曲も数多く(すくなくとも1話ごとに1曲分)収録されている。本作の楽曲はどことなく昭和の残り香が漂うラシェーラに合わせて、弦楽器を主軸に据えたノスタルジックなものが大半を占めている。サウンドトラックはインスト集とボーカル集があり、前者は本編未使用の曲も含めて収録されている。

イオンの記憶を辿って最初に向かうことになる第一の扉の先に広がる夢セカイ・旧都万寿沙羅は、古風で昔懐かしい下町といった様相の旧市街である。そこで流れるこの曲は、地表最下層であるがゆえに絶えず汚染の危機に晒されていることすら忘れさせるような、美しく澄んだバイオリンの音色が特徴の一曲である。なだらかで麗しい旋律と、それとは対照的に退廃的な色合いを帯びたピアノとギターと電子音の伴奏が見事に調和することで、破滅を目前に控えながらも温かで人情味あふれる万寿沙羅の魅力を余すことなく表現している。1分手前ではエレキギターも入り、弦の音色ともども力強い盛り上がりを見せる。ノスタルジックだがどこか非現実じみた、独特な響きを帯びた一曲である。

7次元先の世界を舞台にしているだけあって、本作の楽曲はいずれも浮世離れした幻想的な雰囲気がありますね。とても素敵です。