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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#329 『神の使い』(浜渦正志/チョコボの不思議なダンジョン/PS)

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スクウェアがおくるローグライクダンジョンRPG

チョコボの不思議なダンジョンより、浜渦正志作曲、『神の使い』。

神竜戦で流れます。

FFシリーズのマスコット・チョコボを主人公に、不思議のダンジョンシリーズのローグライク要素を組み合わせた本作。モーグリと一緒に旅の途中で立ち寄った村で、謎の紫水晶に取り憑かれて不思議なダンジョンが出現する事件が発生、村の危機を救うために冒険することになる。硬派でシビアな雰囲気で知られる不思議のダンジョンとは一線を画するライトなつくりとなっていて、FFの世界観を踏襲し、おなじみのモンスターや魔法などが登場する独自のゲーム性が特徴である。やり込み要素も充実していて、9999階に達する底なしのダンジョンも存在する。チョコボらしい作風とローグライクな特性が融合した仕上がりとなっている。後にワンダースワンに移植された。

本作の音楽を担当するのは浜渦正志氏。発売当時の1997年、スクウェアに入社したばかりの新人で、本作が初めて単独で作曲した作品である。氏は後にFF本編でも作曲で参加することになる。本作ですでに氏の特徴とも言うべき、オーケストラ調の透明感あふれる作風が確立されつつあり、切なくも美しい楽曲の数々がチョコボシリーズのサウンドの基礎を築き上げている。サウンドトラックについては、オリジナル盤に加え、氏自身と佐孝康夫氏によるフルオーケストラアレンジ盤も存在する。

神竜、FF5で初登場した強敵との戦闘で流れるのがこの曲である。神竜は本作においては第3ダンジョンの88階に居座る隠しボスとして登場し、圧倒的な力で襲いかかってくるが、この曲はそうした状況に一見そぐわないとすら感じられる、戦闘曲らしからぬ煌びやかな音使いが印象的である。きらきら輝く木琴の旋律に、跳ねるような軽快さを誇るピアノの音色が響き合うことで、ポップで可愛らしい空気感を作り出す。活き活きとした曲調ながらも、ときどき繊細で儚げな雰囲気が見え隠れしていて、戦闘曲と言って連想される激しさとは無縁だが、神竜戦というシチュエーションに見事にマッチした独特な臨場感を生む。心躍るような神秘的な瑞々しさに満ちあふれた一曲である。

キュートだけど案外シリアス、というチョコボシリーズらしさがとてもよく表現されていますね。