VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#333 『lovefake』(丼/ナノスマイルズ/PC)

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Yarhallaがおくる全方位シューティング・ナノスマイルズより、

丼作曲、『lovefake』。ステージ曲の一つ。

フリーゲーム開発者の丼氏の個人サイト・Yarhallaで配信されている本作。マグマの噴出により地球が滅亡してしまった世界で、人工超好熱性細菌と呼ばれる菌を操って微生物の群れを指揮し、迫りくる脅威に立ち向かうことになる。自機に攻撃性能がなく集めた微生物の仲間たちに攻撃してもらう他力本願なゲーム性が特徴の、RTS要素を含む全方位の弾幕系シューティングである。全16ステージから成り、STG初心者でも小気味良くプレイできるシンプルな、それでいて徐々に歯応えが増していく絶妙なゲームバランスに調整されている。独特な世界観とシューティングの面白さが融合した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは丼氏。本作をつくりあげた張本人であり、Yarhallaの他に、音楽方面では16次元レコードというアマチュアアーティストによる楽曲配信サイトを主宰している。氏は主にチップチューンを得意としていて、本作でもレトロ風味のある軽やかなテクノ系の楽曲が多い。ステージ曲は自由に設定できるが初期状態では選択肢がすくなく、ステージをクリアすることによってその都度BGMが解禁されていく。

ステージ11をクリアした暁に追加される三曲のうちの一つがこの曲である。他二曲(無機質なエレクトロが堪能できる『inner world's body』と、アップテンポなチップチューンが心地良い『funkascape』)と比べて、この曲はピアノの生音と電子音、心臓が早鐘を打つかのように響く四つ打ちのドラムビートを効果的に組み合わせることで、異質なほどシリアスな雰囲気を漂わせている。全編通して貫かれる煌びやかなスピード感が、奇妙に中毒性のある洗練されたリズムを生み出し、第二のサビがやってくる2分13秒手前で1秒ほど完全に音が停止すると、続いて訪れる電子音の荒波がいっそう退廃的な切迫感を煽る。滅亡以後の地球のなかのミクロな次元を舞台とする本作を表現するにふさわしい一曲である。

記事を書くにあたってさくっと再プレイしましたが、この世界観が何とも言えず心地良いですね。『inner world's body』と『funkascape』もあわせてどうぞ。

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