VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#380 『White Devil』(濱本理央/エースコンバット アサルト・ホライゾン/PS3・X360)

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バンダイナムコがおくるフライトシューティング・エースコンバットより、

濱本理央作曲、AHの『White Devil』。Misson 9「Siege」にて流れます。

エースコンバットシリーズのうち、11作目にして初のPS3向けの作品である本作。アフリカ全土で巻き起こる反政府運動に、NATO加盟国から成る連合軍は多国籍部隊を編成して対抗するも、反政府軍側の新型兵器によると思われる正体不明の爆発が発生、事態が混迷を極めるなか、連合軍の一員であるアメリカ空軍所属のパイロット、ウィリアム・ビショップ中佐が戦火に身を投じることになる。X2に引き続き現実世界が舞台で、至近距離での戦闘に焦点を当てたクロスレンジアサルトシステムが特徴である。1対1のドッグファイトモードはもちろん、低空飛行で地上目的を一掃できるエアストライクモードが搭載されている。超音速・大破壊シューティングと銘打つ通り、本作は今までになく破壊モーションが緻密に描き込まれていて、敵機の翼がもがれ無残に散りゆくさまをまざまざと見て取れる。リアル志向のシナリオやシネマティックな演出、大胆に革新されたシステムなど、従来のシリーズとは異なる路線を打ち出した野心的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは大久保博氏、小林啓樹氏、濱本理央氏に加え、イズタニタカヒロ氏、自営山氏、鈴木克崇氏、日比野則彦氏の総勢七名の作曲家たち。このうち大久保氏、小林氏、濱本氏が中心に作曲していて、他の四名はそれぞれ1曲ないしは2曲担当している程度にとどまっている。本作の楽曲はリアルな世界観を反映してかアメリカのシアトルでレコーディングされていて、豪華なオーケストラに民族楽器の音色が融合したエレクトリックサウンドが熾烈な空戦をドラマチックに彩ってくれる。サウンドトラックは限定盤の特典で、単体では市販されていない。

Mission 9「Siege(包囲)」で流れるのがこの曲である。ロシアのベールイ基地を舞台に、味方輸送機を援護しつつ反乱軍を撃退する対空・対地ミッションである。イントロでざわざわと戦慄くように響くオーケストラが焦燥感を煽り、エレキギターの音色が入ると、一歩たりとも退くことのできぬ緊張感を漂わせる。焦らすように似たり寄ったりのフレーズを奏で続けるストリングスは、2分手前で透き通るようなコーラスとともに目一杯の高音を轟かせることで束の間の解放感を演出する。ややあって再び2分54秒あたりから伴奏にエレキギターも加えながら今一度繰り返すと、その荒々しくも神秘的なフレーズは破壊のカタルシスを凝縮したかのような印象さえ与える。ちなみにミッションの舞台となるベールイはロシア語で「白」を意味し、「白い悪魔」を意味する曲名ともリンクする。

4の『Blockade』然り、こういう焦らしの利いた曲はいいですね。

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