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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#443 『悲壮なる叫び』(甲田雅人/El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON/PS3・X360)

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イグニッションエンターテインメントがおくる3Dアクションゲーム・エルシャダイより、

甲田雅人作曲・松尾早人編曲、『悲壮なる叫び』。

サリエル戦で流れます。

イギリスの開発会社であるイグニッション・エンターテインメントの代表作にあたる本作。旧約聖書エノク書を題材に、神の命により堕天使の束縛を任された主人公・イーノックは、地上界の命運を賭けた戦いに身を投じることになる。簡単なボタン操作で繰り出せるシンプルなアクションと、絵画のように美しいビジュアルが特徴で、三すくみの武器を使いこなして進めていく。遥か古の時代を舞台としたシュルレアリスティックな世界観ならではの小粋なセンスが光る仕上がりとなっている。後にSteamやスイッチ向けにHDリマスター版が登場した。

本作の音楽を担当するのは甲田雅人氏と長谷川憲人氏。いずれもデザインウェーブに所属する作曲家たちである。また、編曲には澤口和彦氏、多田彰文氏、松尾早人氏など、イマジン所属の五名の精鋭が参加している。本作では神話的でありながらどこか現代的で前衛的な作風にあわせて、コーラスやストリングスなどを大胆に取り入れた壮大な楽曲が一通り揃っている。その多くはフルオーケストラによる生演奏であり、重厚さの光仕上がりとなっている。サウンドトラックは2枚組で発売されていて、そのうち一部の楽曲は個別にではなくメドレー形式で収録されている。

七大天使の一人であり、人間の愛に魅せられ堕天の道を選んだサリエルとの戦闘で流れるのがこの曲である。イントロから非常に疾走感あふれる、優艶なバイオリンの旋律が印象的で、小気味良いドラムとギターが融合して生み出されるアヴァンギャルドな伴奏が、戦闘の昂揚感をぐっと高めてくれる。メロディーラインそのものはさながら愛を囁くように甘美で官能的だが、息をつく間もなく展開する怒涛の音色rが、激情に駆られたかのような好戦的な響きを持つ。曲名にふさわしい悲壮感に満ちた一曲である。

曲名のセンスが素敵ですね。サリエルの情熱的な人物像にもよくマッチしています。