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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#514 『ファイナル・バトル』(Grant Kirkhope/バンジョーとカズーイの大冒険/N64)

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レアがおくるアクション・バンジョーとカズーイの大冒険より、

Grant Kirkhope作曲、『ファイナル・バトル』(英題は『Final Battle』)。

ラスボス戦で流れます。

ディディーコングレーシングで初登場したオスの熊・バンジョーとその相棒であるメスの鳥・カズーイの二匹が主役を務める本作。魔女にさらわれてしまったバンジョーの妹を救うべく、二匹はそれぞれの特徴を活かして一心同体の大冒険に出る。二匹で協力しながら多彩なアクションを駆使し、ギミック満載の箱庭型のステージに散らばるジグソーとオンプを、ときに謎を解いたり人助けをしながら集めていくことになる。全体的にコミカルでユーモラスな作風ながら、毒気の強いシニカルさも兼ね備えていて、難易度もそこそこ高いなど、歯応えのある仕上がりとなっている。後に10年の時を経てXBLA向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのはGrant Kirkhope氏。当時レアに所属していたスコットランド出身の作曲家である。氏はドンキーコングシリーズにはドンキーコングランドから携わっていて、バンカズシリーズにはメインコンポーザーに抜擢され、ほぼ皆勤賞(日本未発売の外伝作Banjo-Pilotのみ不参加)を果たしている。本作では、その滑稽で軽妙な世界観にあわせて、素朴で陽気なサウンドを中心に収録されている。状況に応じて音色が変化するといったインタラクティブな仕掛けも搭載されていて、当時としては先進的な試みもすくなくない。こうした路線は以降のシリーズでも踏襲されている。サウンドトラックはボーナストラックも含めて収録されている。

様々な苦難を乗り越えて妹を救い出し、スタッフロールも流れてようやく大団円……とはいかず、バンジョーとカズーイは取り逃がした魔女グランチルダとの最後の戦いに挑むことになる。その最終決戦で流れるのが、トランペットやバイオリンが一丸となって奏でる迫力満点のこの曲である。ここまで辿り着く条件の厳しさに加え、グランチルダ自身も疲れ知らずの強靭さを備えていて、最終的に五段階まで強化されるなど、かなりの難敵であるが、そうしたシビアなシチュエーションにふさわしい盛り上がりを見せてくれる。イントロの『グランチルダのとりで』をはじめ、『カッチコッチなもり』『サビサビみなと』『マッドナイトまんしょん』など、各ステージ曲のフレーズがふんだんに織り込まれていて、ごった煮のメドレーでありながらも見事なまでの統一感を誇る仕上がりとなっている。本作のすべてがまるごと凝縮されていると言っても過言ではないくらい、遊び心がたっぷり注ぎ込まれた一曲である。

陽気だけど不穏で、軽快だけど威圧的で、本当にいろいろ搔き集めてきた感じですよね。すごく本作にぴったりだと思います。