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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#538 『Hôtel De Monaco』(Austin Wintory/Monaco: What's Yours Is Mine/PC)

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Pocketwatch Gamesがおくる2Dステルスアクション・Monacoより、

Austin Wintory作曲、『Hôtel De Monaco』。同名のミッションで流れます。

Andy Schatz率いるインディーデベロッパー・Pocketwatch Gamesの代表作である本作。見下ろし型の泥棒アクションで、ステージに潜入し、警備の目を掻い潜ってお目当てのアイテムを盗み出し、無事脱出することが目的である。解錠スキルに長けるThe Locksmithや壁を破壊できるThe Moleなど、それぞれ固有の能力を持つ8人のキャラクターが用意されていて、シンプルなアクション性と奥深い戦略性とが見事に両立したスリル満点なゲームバランスとなっている。シングルプレイはもちろん、マルチプレイでこそ真価を発揮する作品である。

本作の音楽を担当するのはAustin Wintory氏。アメリカ出身の作曲家で、インディーゲームの作曲を数多く手がけている。本作では当初ディレクターのSchatz氏の意向で既存のピアノ曲を用いる予定だったが、Wintory氏が本作のサウンドを(この手のジャンルで作曲することは滅多にないチャンスだと感じたため)ぜひ一から作曲してみたいと申し出たことから、それが実現して珠玉の楽曲群が誕生するに至った。いずれの楽曲もサイレント映画にみられるようなソロピアノによるラグタイムに仕上がっていて、古き良き時代のノスタルジアを喚起させるような魅力にあふれている。サウンドトラックはオリジナル音源のもののほか、多数の作曲家を招いてアレンジ合戦をおこなったThe Gentleman's Private Collectionなるものも発売されている。

モナコの高級ホテルを舞台に繰り広げられる脱出ミッションで流れるのがこの曲である。メインストーリーであるThe Locksmith's Storyのラストステージ(厳密にはこの後にEpilogueがあるが)として、それまで協力してきたはずの8人が仲間割れして裏切るというショッキングな展開が待ち受けるが、そうしたなかで流れるこの曲は、その荒ぶるピアノの速弾きからして、決して後戻りできぬような切迫感を醸している。他の多くの楽曲同様、メインテーマの『What's Yours Is Mine』とメロディーを共有していて、そのメリハリに富んだ音使いは、一台のピアノで表現できる喜怒哀楽のすべてを詰め込んだかのごとく、軽快でありながら重厚、明朗でありながら暗澹とした雰囲気をも漂わせている。まさにクライマックスを彩るにふさわしい切羽詰まった一曲である。

ピアノの獰猛な感じがいいですよね。『What's Yours Is Mine』もあわせてどうぞ。

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