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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#598 『Anu Orta Veniya』(小林早織/パンツァードラグーン オルタ/Xbox)

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セガがおくるドラマティックシューティング・パンツァードラグーンより、

小林早織作曲、オルタの『Anu Orta Veniya』。エンディングで流れます。

自由自在にドラゴンを駆って敵を撃ち倒すパンツァードラグーンシリーズのうち、現時点での最終作(リメイク除く)にあたる本作。セガサターンからXboxにハードを移したことで、もともと美麗だったグラフィックはさらに大幅に強化され、前作のモーフィングシステム(ドラゴンの飛行形態を変化させる)も引き続き搭載されているなど、新旧の要素どちらもが正統な進化を遂げている。ことばすくなながらも非常に丁寧に描き込まれた濃密な世界観は本作でも健在で、おまけにクリア後には初代をまるごとプレイできる充実ぶりが特徴である。総じてシリーズの集大成にふさわしい爽快感と重厚感を両立させた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは小林早織氏と蓑部雄崇氏。いずれも当時セガに所属していた作曲家である。小林氏は前作のアゼルから、蓑部氏は本作からシリーズの作曲に携わっていて、オーケストラサウンドを得意とする両名の実力が遺憾なく発揮されている。本作の世界観にあわせて、幻想的で壮大で、どこか魔術的な響きを帯びた楽曲が勢揃いしていて、シリーズ恒例の架空言語(いわゆるパンツァー語)によるテーマソングも完備されている。サウンドトラックは発売後すぐに一度、その後しばらくしてからもう一度、ダウンロード配信限定でリマスター版が登場した。

くだんのパンツァー語によるテーマソングというのが、エンディングで流れるこの曲である。静やかなフィドルのイントロから始まり、ほぼ独奏で30秒ほど静寂を彷徨うと、そこから伊藤恵理氏の歌声が力強く木霊する。どこか強烈な郷愁を誘うエキゾチックな音使いは、一段と声が強調されるようになる1分25秒あたりから、より深く、より美しく響き渡り、パンツァー語の持つ独特な発音、独特な耳心地の良さを印象付ける。歌唱に一区切りつくと、曲調が変わって今度は勇壮なオーケストラによる流麗なアンサンブルが挿入され、再びボーカルが舞い戻る頃にはかつてないほどの盛り上がりを見せる。その幽玄で玄妙で妙絶たる旋律は、まさに本作の底知れぬ魅力に裏打ちされた深甚なる世界観を見事に表している。

歌詞の邦訳や言語の解読はよそに任せます。音だけ聴くと意味が取れないのですが、実際に綴りを見るといろんな言語が混ざっているのが分かって面白いですね。

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