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#648 『パルミラ片でお買い物』(星野康太/エヴァーグレイス/PS2)

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フロムがおくるコーディネイトRPGエヴァーグレイスより、

星野康太作曲、『パルミラ片でお買い物』。ショップで流れます。

PS2発売から1ヶ月後、最初期のRPGとして登場した本作。不幸を呼ぶとされる呪いの烙印を宿す青年・ユテラルドと、その姉代わりの女性・シャルアミの二人の主人公が、期せずして失われたはずの消滅帝国・リューベーンに迷い込み、元の世界への帰還を目指して旅することになる。装備するRPGという謳い文句通り、レベルの概念がない代わりに武器や防具を装備してステータスを強化し、それが見た目にも反映されるという着せ替え要素が大きな特徴である。装備ごとに固有のパルミラアクションと呼ばれる能力を駆使しながら、それぞれ独立した物語を紡ぐ二人の主人公を操作することになり、その独特な異国情緒ならぬ異世界情緒を漂わせる世界観が、摩訶不思議な没入感をもたらしてくれる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは星野康太氏。スタッフロール上では星野氏がチーフサウンドクリエイターで、他にもサウンドクリエイターとして神田有士氏、齋藤司氏、瀬川圭一郎氏の名前が確認できる。いずれも当時フロムに所属していたか今も所属している作曲家たちである。本作の音楽はその奇妙な世界観にあわせて、オープニングからして強烈なインパクトを誇る出来栄えで、幻想的なエスニックサウンドと前衛的なエクスペリメンタルミュージックを組み合わせたかのようなソウルフルな楽曲が勢揃いしている。サウンドトラックは早い段階で登場し、ボーナストラックを含めて収録されている。

本作におけるショップは、各地のセーブポイントから一瞬でワープ可能となっているが、そこで買い物をするときに流れるのがこの曲である。騒がしくせわしげなイントロから始まり、笛やリュートの音色とともにガヤガヤと陽気な笑い声が響くことで、オリエンタルな空気感を醸しながら市場の賑わいを表現している。そのカオスな音使いは、まるで異なる二つの曲を同時再生しているような、あるいはおもちゃ箱どころか玉手箱すらひっくり返してしまったような狂乱に満ちている一方で、聴けば聴くほど耳に馴染んで不思議と安心感を与えてくれる。冒険の箸休めに、装備を揃えて身だしなみを整え、コーディネイトのセンスをチェックするひとときを華やかに彩る一曲である。

店主のあの奇妙に甲高い声と一緒に記憶に残りやすそうですね。記事ですこし触れたオープニング(『EG Expression 1 リューベーンの嵐 』)もあわせてどうぞ。

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