VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#672 『Chicago: Stealth』(Grant Kirkhope/Perfect Dark/N64)

www.youtube.com

レアがおくるファーストパーソンシューティングパーフェクトダークより、

Grant Kirkhope作曲、『Chicago: Stealth』(コロンなしの『Chicago Stealth』とも)。

ミッション「シカゴ<潜入>」で流れます。

ゴールデンアイ007の後継作であり、ニンテンドウ64のメモリー拡張パック専用タイトルとして登場した本作。近年不自然な急成長を遂げる兵器関連企業・データダイン社の内部調査をおこなうべく、完璧なテスト成績により「パーフェクト・ダーク」の異名を持つ新人エージェントのジョアンナが潜入することになる。一人で任務をこなすソロ・ミッションと、最大4人まで対戦できるコンバット・シミュレータの大きく二つのゲームモードがあり、オーソドックスな銃器のみならず、ノートパソコンの形をしたラップトップガンや対象に貼り付けて炸裂させるセンサー爆弾など、個性豊かな武器を駆使して攻略していく。快適な操作感や濃厚なSFの世界観と相まって、ガンアクションの面白さを手堅く凝縮させた仕上がりとなっている。後にXBLA向けに移植された。

本作の音楽を担当するのはDavid Clynick氏、Grant Kirkhope氏、Graeme Norgate氏の三名。発売直前に独立したNorgate氏を除き、いずれも当時レアに所属していたイギリス出身の作曲家たちである。Kirkhope氏とNorgate氏は007でもサウンドを手がけていて、Clynick氏は続編のパーフェクトダークゼロでも作曲することになる。潜伏と銃撃を主とするゲーム性に合わせて、本作では張り詰めた空気感が漂うスリリングなサウンドが多く、戦闘時と非戦闘時で曲が切り替わって別アレンジが流れるなど、インタラクティブな要素も完備されている。サウンドトラックは海外のみで発売されているものやデジタル配信されているものなど数種類存在し、曲名の表記もまちまちである。

ミッション3の「シカゴ<潜入>」において流れるのがこの曲である。機密アイテムを入手しつつ脱出ルートを確保して次の目的地に向かう、といういかにもスパイらしい任務だが、この曲ではそうした場面にふさわしい静かな昂揚感を見事に描き出している。ゆったりと奏でられる主旋律に、どこか不穏に響くストリングスの和音、1分半を過ぎたあたりではオルゴールのような音色も加わって、失敗の許されぬ状況を臨場感たっぷりに彩ってくれる。2分40秒からは戦闘アレンジ(曲名は『Chicago: Stealth X』、サントラでは上記動画のように一つにまとめられている)で、テンポが一気に上昇し、パーカッションも参入すると、より切迫した刺激的な雰囲気を醸し出す。静と動の対比が印象的な一曲である。

戦闘アレンジでアップテンポになっても相変わらず得も言われぬ不穏さが伝わってくるところがいいですよね。