VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#734 『Graze the Roof』(Laura Shigihara/Plants vs. Zombies/PC)

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PopCap Gamesがおくるタワーディフェンスゲーム・プラントvs.ゾンビより、

Laura Shigihara作曲、『Graze the Roof』。屋根のステージで流れます。

アクションとストラテジーの要素を持つタワーディフェンスゲームとして登場した本作。庭に侵入してきたゾンビたちを退治すべく、進路上に植物を植えて防衛線を築くことになる。順にステージクリアを目指すAdventure、寄り道のMini-games、壺割りに挑戦したりプレイヤー自身がゾンビとなって戦ったりするPuzzle、ゲームオーバーになるまでエンドレスにゾンビの進軍を凌ぐSurvival、そして獲得した植物を鑑賞するZen Gardenの五つのゲームモードが用意されている。ゾンビ迎撃用に適した植物を瞬時に選択し、エネルギー源となる太陽の傾きや時間帯、天気などにも注意しつつ攻略していくことから、とっさの判断力と機転とが試される仕上がりとなっている。後にスマホXBLA、DS、PSN、PS Vitaにも移植された。

本作の音楽を担当するのはLaura Shigihara氏。日本語名は鴫原ローラ、アメリカ生まれの日系シンガーソングライターで、ゲーム音楽に関しては主にインディーズの作品の作曲を中心に担当することが多い。また、本作の続編の2でも引き続き作曲している。本作では氏が得意とし、かつ演奏も手がけているピアノを主軸に、こぢんまりとしつつも奇妙に焦燥感を煽るダークエレクトロニカ風の楽曲が揃っている。主題歌には英語版と日本語版があり、いずれも氏自身がボーカルを務めている(男声パートは英語ではGeorge Fan氏、日本語では氏の父親が歌っている)。サウンドトラックは実際にゲーム内で収録されたインゲームバージョンと高音質バージョンの両方が収録されている。

Adventureモードの最終ステージである屋根の上の防衛戦で流れるのがこの曲である。屋根には直接植物を植えられないため、植木鉢を設置したうえで、段差を考慮しながら(真っすぐ弾を発射する豆類は使いづらく、放物線上の軌道を描く植物が有効)攻略していく必要があるなど、今まで以上に思考力を問われるが、そうした歯応えのある状況を不思議と楽しく彩ってくれる。その丸みを帯びた音色は、なだらかに響くピアノ旋律と相まって絶妙な耳心地の良さを誇る。要所要所にDJスクラッチを交えたり、鐘を鳴らしたり、ときには吹奏楽器を取り入れたりすることで、全体として心地良く感じられるなかでも刻一刻と変化が生じていき、不思議と気を抜くことのできない焦慮をも漂わせる。独特な安寧と、それとは相反するはずの不穏さとが見事に両立した一曲である。

曲名にあるgrazeというと、「軽く触れる、かすめる」という意味のほかに「(家畜などが)草を食う」という意味もあって、どこか植物っぽさが感じられる表現ですね。