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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#877 『for you and for me』(杉江一/ロゼと黄昏の古城/PSV)

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日本一ソフトウェアがおくる古城探索アクション・ロゼと黄昏の古城より、

杉江一作曲、『for you and for me』。ブラン戦で流れます。

htoL#NiQ(ホタルノニッキ)の流れを汲むアクションゲームとして登場した本作。色と時間が失われた古城で、訳も分からず目覚めた少女・ロゼは、背中に宿す呪われた茨の力と、古城で出会った巨人の力を借りて、古城からの脱出を目指すことになる。流血・惨死表現の多い陰鬱な世界観が特徴で、赤く染まった血を宿す事物のみに時間が流れている古城で、ロゼが持つ茨の力(血を操る能力)を駆使してギミックを止めたり動かしたり、巨人の怪力を駆使して持ち運んだり投げたりしてステージを攻略していく。パズル要素と死に覚え要素が強いステージクリア型アクションとして、癖のある作風ながらも意欲的な仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのは杉江一氏。フリーランスの作曲家で、本作と同じ系譜のホタルノニッキや後発のボイドテラリウムでも作曲経験がある。本作では静止した古城の、美しくも暗澹とした雰囲気を表現すべく、ピアノや弦楽器を中心とした物憂げで儚げな楽曲が多く揃っている。サウンドトラックは初回限定盤に付属されているほか、SteamのDLCとして配信されている。

ブランはロゼと瓜二つの少女で、一周目のラスボス(クリア後にトゥルーエンドに繋がる真のラスボスに挑める)として立ちはだかることになるが、その彼女との戦いで流れるのがこの曲である。ピアノの静謐な調べと、グロッケンと思しき煌びやかな鉄琴の音色とが絡み合うメランコリックなイントロから始まり、ストリングスを随えて悲愴感たっぷりのメロディーラインを紡いでいく。開始から43秒あたりで大仰にシンバルが響くと、物悲しくも勇ましい勢いを増していき、1分27秒あたりで再びシンバルが入ると、さらにもう一段階、力強いクレッシェンドをかけて苛烈な盛り上がりを見せる。引き裂かれんばかりの悲しみを湛えた弦とピアノが混ざり合い、しばし激しい協奏を披露するが、やがて静かに収束し、ループへと突入する。「貴女(ブラン)と私(ロゼ自身)のため」の決戦を彩るにふさわしい、悲痛さに満ちた一曲である。

ラスボス戦といえば、真ラスボス戦の曲も素敵ですね。あっちは一旦盛り上がるとずっと盛り上がり続けますが、こっちは段階ごとにすこしずつ音の厚みを積み重ねて丁寧に盛り上がっていって、最終的にはループで仕切り直してまた同じプロセスを繰り返す、途方もない緩急のようなものがあるのが印象的です。真ラスボス戦の『battle to ascertain』もあわせてどうぞ。

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