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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#879 『通常エンディング』(石橋渡・佐宗綾子/BLOOD+ ~双翼のバトル輪舞曲(ロンド)~/PS2)

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Production I.Gのアニメ「BLOOD+」を原作とする、

エイティングがおくるリアルタイムムービーアドベンチャー

双翼のバトル輪舞曲より、石橋渡・佐宗綾子作曲、『通常エンディング』(仮称)。

通常エンディングのスタッフロールで流れます。

女子高生の音無小夜が刀を手に吸血生物・翼手と戦う「BLOOD+」の初のゲーム化作品として登場した本作。旅の途中で翼手の不穏な情報を得た小夜は、調査のために揚翔学園高等部に編入し、七日間の激闘に身を投じることになる。アニメのベトナム篇とロシア篇の間に起きたオリジナルストーリーを描いていて、選択次第で物語や操作キャラが変わるアクティブデモシステムが採用されている。フルボイスのアニメで展開されるアドベンチャーパートと、簡単な入力で派手に敵と戦うアクションパートに分かれていて、特に後者は操作するキャラによっては取れる行動が限られたりそもそも戦闘能力がなかったりする。総じて原作アニメの世界観を真っ当に受け継いだ仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは石橋渡氏、佐宗綾子氏、細江慎治氏の三名。音楽制作会社スーパースィープ所属の作曲家たちで、石橋氏のみすでに退社済み(かつ故人)である。このうち細江氏はボーカル曲(いわゆる歌詞入りの主題歌が存在するわけではなく、人の声が入った声楽曲のこと)のみの担当で、その他の楽曲は石橋氏と佐宗氏が手がけている。アニメ版の劇伴では映画音楽の巨匠と名高いHans Zimmer氏らによる格調高いオーケストラサウンドが特徴だが、本作でもその路線を踏襲し、悲壮的な作風に見合った楽曲が揃っている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

複数に分岐する結末のうち、真の黒幕に辿り着かずに迎えるエンディングでのスタッフロールで流れるのがこの曲である。切なげなピアノとストリングスのイントロから始まり、30秒ほど張り詰めた空気を漂わせると、フレーズが終わる頃になだらかなハープの音階が奏でられ、続いて温かくも物憂げなギターの旋律が加わる。45秒でピアノが主旋律に復帰すると、その幻想的な調べにあわせて、時折響くコーラスがメランコリックな興を添える。管楽器も交えて徐々に盛り上がり、それまで控えめにシャカシャカと鳴るだけだった打楽器に、1分40秒以降はドラムも本格参戦すると、いっそうはっきりと哀愁のリズムを刻む。まだ終われない、心のどこかで何かがつっかえるようなもどかしさを体現した一曲である。

通常エンドで魅せられ、真の黒幕との戦闘曲でさらに魅せられ、最後のスタッフロールでメインテーマの声楽が悲しすぎるほど綺麗にアレンジされていて、本作の楽曲はどれもすごく素敵です。真ラスボス戦とトゥルーエンドの曲もあわせてどうぞ。

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