VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#893 『きおくのかなた』(川崎ヤスヒロ/Dokuro/PSV)

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ゲームアーツがおくる骨太ギミックアクション・Dokuroより、

川崎ヤスヒロ作曲、『きおくのかなた』。ステージ1とスタッフロールで流れます。

ゲームアーツの開発チーム・Pon-kotz TroopsによるVita向けの横スクロールアクションとして登場した本作。魔王の配下であるはずのドクロは、魔王がさらってきたお姫さまを不憫に思い、一緒に罠だらけの魔王城から脱出することになる。チョークで描いたような絵柄で彩られた世界観のもと、お姫さまを安全にゴールへと導く、謎解きとアクションが融合したステージクリア型のゲーム性が特徴である。通常のドクロの姿は身軽で二段ジャンプが可能な一方で、敵に直接攻撃できないが、魔法の薬で一時的にイケメンに変身すれば、ジャンプ性能は落ちる代わりに攻撃が通り、お姫さまだっこで姫を運べるようになる。骨太という謳い文句に違わずシビアなアクションと思考力が問われるような、シンプルながらも味わい深い仕上がりとなっている。後にスマホやPC、スイッチ向けに移植された。

本作の音楽を担当するのは川崎ヤスヒロ氏。主にテレビ番組の劇伴やCMの作曲を手がけている作曲家で、ゲーム音楽方面ではクインテットのガイア幻想記やタカラトミーゾイドシリーズなどを担当したことがある。本作では絵本のような、キュートだけどちょっぴりおどろおどろしくもある不思議な作風にあわせて、アコースティック系の情緒豊かな楽曲が揃っている。サウンドトラックはスマホ版の購入特典として無料配信されているほか、一部の楽曲は公式サイトからダウンロードできる。

ステージ1「城の尖塔」、そして本物のスタッフロール(作中に一度、偽のエンディングでスタッフロールが入るが、そこでは別の曲が使用される)で流れるのがこの曲である。哀愁漂う三拍子のリズムに、リコーダーの素朴で美しい音色が響き渡る、質素ながらも非常に耳馴染みするメロディーが印象的で、音数はすくないが心の琴線に触れるような奥深い響きを秘めている。ステージ1はチュートリアルらしい簡素なつくりで、スタッフロールは一見唐突に思える昔話から始まり、徐々に物語の全容が見え、最終的には素敵な余韻に浸らせてくれるが、そのいずれのシチュエーションにも合致した一曲に仕上がっている。

スタッフロールにこの曲を持ってくる采配が見事です。この曲に限らず、本作の曲名はほとんどひらがな綴りですが、それがまたよく雰囲気に合っていますね。