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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#900 『Stardust Speedway "B" mix』(幡谷尚史/ソニック・ザ・ヘッジホッグCD/MCD)

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セガがおくるアクション・ソニックより、

幡谷尚史作曲、CDの『Stardust Speedway "B" mix』。

ROUND 6のバッドフューチャーで流れます。

ソニックシリーズのうち、3作目にあたる本作。時間に干渉する神秘の宝石が眠る惑星・リトルプラネットを舞台に、世界征服を目論むエッグマンに占領された惑星を解放すべく、ソニックは時空を越えた冒険に出ることになる。各ROUND(ステージ)は3つのZONEから成り、そのなかに過去・現在・未来の時間軸が存在する仕組みで、基本的なマップ構成こそ共通しているが、風景やギミックの配置など細部が異なる。過去を変えることで、エッグマン支配下の未来(バッドフューチャー)を好転させ、グッドフューチャーに導くことができ、エンディングにも影響する。今ではおなじみのエミーやメタルソニックが初登場したのも本作で、スピーディーなゲーム性に時空を行き来する面白みが融合したシリーズ初期の傑作に仕上がっている。後に複数の作品とともにゲームキューブPS2などに移植されたほか、スマホやPC向けにも登場した。

本作の音楽を担当するのは尾形雅史氏と幡谷尚史氏。尾形氏は当時、幡谷氏は現在もセガに所属している作曲家である。北米版では両氏に加えてSpencer Nilsen氏、David Young氏、Sterling(Mark Crew)氏が参加している。前作までDREAMS COME TRUE中村正人氏が単独で作曲していたが、本作からセガの作曲陣にバトンタッチすることとなった。全編にわたってダンサブルなクラブミュージックやヒップホップが取り入れられていて、シリーズ初のボーカル曲が採用された点も目新しい。ROUNDごとに過去、現在、未来(グッドとバッドの2種類)で計4曲用意されていて、北米版では過去を除き差し替えられている。サウンドトラックは長らく存在しなかったが、シリーズ20周年記念にボーナストラック付きで発売された。

全7面中ROUND 6「STARDUST SPEEDWAY」のバッドフューチャー、すなわち改変前の未来で流れるのがこの曲である。煌めく夜景を背景に、荒廃し切った未来では全体的に禍々しい紫の色調に変化していて、最終ZONEではメタルソニックとスピード勝負をすることになる。そうした独特な景色やシチュエーションを、奇妙な声やサイレンのようなものが入り混じったイントロ、続いて奏でられる流麗なピアノ、リズミカルなDJスクラッチが力強く彩る。曲後半の40秒過ぎ、イントロで聴き覚えのあるパワフルなオーケストラヒットが鳴り響く、インパクト抜群の歌唱と相まって独特な中毒性を醸し、さらにまたサイレンが加わることで、ノリは良くても不穏で不吉な印象を漂わせる。ソニックらしい小洒落た疾走感と、未来世界の只ならぬ空気感とが見事に両立した一曲である。

過去も現在も改変後の未来もアレンジなのでそれを聴き比べるも良し、ソニックジェネレーションズの粋なアレンジを聴くもまた一興ですが、せっかくなので別曲の北米版をすこしだけ紹介しましょう。シンセとギター、ときどきコーラスが絡み合う神秘的かつ重厚な仕上がりで、国内版と比べてメタルソニックとの戦いという側面を重視しているような気がします。あわせてどうぞ。

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