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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#906 『Longing for Home』(Nathan McCree/Tomb Raider/SS)

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Core Designがおくるアクションアドベンチャートゥームレイダーより、

Nathan McCree作曲、『Longing for Home』。ColosseumやPalace Midasで流れます。

イギリスのゲームスタジオ・Core Designの代表作にあたる本作。トレジャーハンターのLala Croftは、秘宝を求めてペルーやギリシャ、エジプトなどの様々な古代遺跡を冒険することになる。当時としてはまだ珍しいフルポリゴンで描写されたステージクリア型の3Dアクションアドベンチャーで、危険な罠や複雑な謎解き、容赦なく襲いかかる敵など、遺跡探索の醍醐味とも言うべきスリリングな要素が勢揃いしている。即死トラップの多い歯応えのある難易度と相まって、アクションアドベンチャーのジャンルを開拓した記念碑的な仕上がりとなっている。日本国内では「トゥームレイダース」という題でPC、セガサターンプレイステーション向けに発売されたほか、後にスマホにも移植された。

本作の音楽を担当するのはNathan McCree氏。イギリス出身の作曲家で、当時Core Designに所属していた。トゥームレイダーシリーズには本作を単独で手がけて以降、3まで担当することになる。本作では環境音や効果音を重視し、要所要所でしか音楽が流れない仕組みで、シンセサイザー音源のオーケストラとコーラスを組み合わせた、シンプルで幻想的な、クラシカルな雰囲気の楽曲が揃っている。氏曰く、楽曲の制作期間が4週間しかなく、一度も曲を書き直すことなく、すべてそのまま収録されたという。サウンドトラックは本作単体では発売されていないが、1~3の楽曲の生演奏のアレンジ盤が存在する。

Colosseum(コロシアム)やPalace Midas(ミダスの宮殿)で流れるのがこの曲である。流れると言っても前述の通り、ステージ中の特定の地点に辿り着いたときにのみ挿入されるもので、Colosseumでは闘技場に、Palace Midasではミダス王の像がある場所に到着した際に初めて聴くことができる。ミステリアスな響きを帯びた鉄琴のイントロから始まり、寂寥感たっぷりの笛の旋律を包み込むように弦楽器の伴奏が加わると、美しくも物憂げな空気感を生み出す。音そのものは優雅で上品だが、音色の組み合わせによってそこはかとなく不安を煽り、さらにまた、重要地点に辿り着いたというシチュエーションからしてもその感覚をいっそう強めてくれるような、メランコリックなメリハリに満ちた一曲である。

曲名はだいたい「故郷を偲ぶ」みたいな意味です。たしかにこう、鬱々とした、ホームシックな感じが出てますよね。生演奏になるとこれまた素晴らしく映える曲で、曲尺も伸びて非常に丁寧かつ気品あふれるアレンジになっています。あわせてどうぞ。

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