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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#973 『関東出兵』(稲毛謙介/戦国無双 Chronicle/3DS)

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コーエーテクモがおくるタクティカルアクション・戦国無双より、

稲毛謙介作曲、クロニクルの『関東出兵』。関東出兵のステージで流れます。

戦国時代で一騎当千する戦国無双シリーズのうち、スピンオフ兼3DSのローンチタイトルとして登場した本作。オリジナル武将の主人公の視点で、1546年の河越夜戦から1615年の大坂の陣までの激動の時代を生き抜くことになる。個別シナリオで個々の無双武将の生き様を追う従来のスタイルとは異なり、プレイヤーの分身となる主人公の立場で戦国の乱世を追体験していく。主人公のほかに最大三人の武将とともに出撃でき、タッチスクリーンで瞬時に操作キャラを切り替えたり、移動指示を出せたりするシステムが導入され、うまく使いこなせば戦場各地を行き来する手間が省かれ、より戦略的かつ爽快に立ち回れるようになった。携帯機ながらフルボイスでイベント量も多く、主人公こそオリジナルだがシナリオは今まで以上に史実を踏襲しているなど、意欲的な要素が詰め込まれた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは稲毛謙介氏と吉松洋二郎氏。稲毛氏は当時、吉松氏は現在もコーエーテクモに所属している作曲家である。本作でサウンドディレクターを務める稲毛氏は2猛将伝以降、吉松氏は3以降、無双シリーズに携わっている。本作ではオリジナルの新曲以外に、過去作からの流用曲やアレンジも搭載されている。和風+トランス系のシリーズサウンドを継承し、据置機と引けを取らない音質で、戦闘シーンやイベントシーンを雅やかに彩ってくれる。サウンドトラックはChronicle3の限定盤に付属される形で、シリーズの楽曲を集めたものが収録されている。

第一章「群雄割拠」の関東出兵で流れるのがこの曲である。ここでは氏康や小太郎ら北条側と共闘し上杉を討つことになるが、その波乱の戦場を伸びやかな篠笛の旋律で鮮やかに盛り上げる。疾走感あふれるトランス風の曲調が印象的で、主旋律が和楽器であるだけでなく、伴奏でも、一番目立つスネアドラムのほかに、太鼓や神楽鈴と思しき和楽器が取り入れられている。とりわけ綺麗に響く篠笛の高音域を駆使しながらスピーディーなメロディーを紡いでいくと、1分手前で一旦パーカッションが鳴りを潜め、安らかな間奏が奏でられる。再度勢いづく1分10秒からは、伴奏は相変わらず適度な緊張感を漂わせ、主旋律は中低音を軸にやや落ち着いた調子で推移した後、満を持して高音が入る2分1秒でループする。一定の焦燥感を煽りつつも心地よく聴き惚れることができるような一曲である。

全体的に爽やかで華があり、なおかつ張り詰めた空気感も漂っている、バランスのいい曲ですね。