Toys for Bobがおくるプラットフォーマーアクション・クラッシュバンディクーより、
Walter Mair作曲、とんでもマルチバースの『Cortex Castle』。
コルテックスのおしろで流れます。
コミカルな作風で遊び応えのあるジャンプアクションが特徴のクラッシュ・バンディクーシリーズのうち、3以来22年ぶりとなる正統ナンバリング作品にあたる本作。おなじみの悪の科学者、ネオ・コルテックスらが開けた穴によって歪んでしまった時空・マルチバースをめぐり、クラッシュと妹のココは異変に立ち向かうことになる。ステージクリア型の3Dアクションという立ち位置はそのままに、アクション要素・パズル要素を強化する新要素として、周囲の時間を遅らせたりステージを天地逆転させたりできる4つの仮面（マスク）が登場した。カジュアルな見た目とは裏腹に即死トラップ満載で死に覚え系の激烈な難易度が特徴で、ダイヤ集めやタイムアタックといった従来通りのやり込み要素に加えて、ステージが左右反転になって一部のギミックが変化するあべこべモードも搭載されている。何度も挑戦し甲斐がある歯応え抜群な仕上がりとなっている。後にスイッチ、PS5、Xbox X|S、PCに移植された。
本作の音楽を担当するのはWalter Mair氏。オーストリア出身の作曲家で、映画やテレビドラマの劇半、CMの楽曲提供など、幅広い分野で活躍している。ゲーム音楽方面ではThe Creative AssemblyのTotal Warシリーズなど、本作の発売元であるActivisionからはCall of Duty: Mobileなどでの作曲経験がある。本作では愉快な作風にあわせた愉快な音楽が揃っていて、シンセ系のエレクトロニックなサウンドに貝殻や骨笛、瓢箪笛（中華圏の笛）、木鼓やタブラ（北インドの打楽器）といったアナログの楽器も交えたハイブリッドで無国籍な音色を楽しめる。サウンドトラックは現時点では販売・配布等はされていないが、公式のyoutubeチャンネルが音源を公開している。
最終盤（ラス前）のステージであるコルテックスのおしろで流れるのがこの曲である。マスクの切り替えが一瞬でも遅れたら即ミスになり、絶えず判断力と瞬発力が問われ続ける熾烈さが印象的なステージで、チャーミングな木琴やエレガンドなハープシコードが奏でる不穏な旋律が独特な臨場感を生む。主旋律こそ軽やかなだが、伴奏は厚みのある低音で構成されていて、39秒あたりからキーが変わって曲調に変化が現れると、1分前後でディストーションをかけるなどして威圧的な響きを強める。しばらくして元の痛快さに戻ったと思いきや、1分12秒あたりで不吉なフレーズが唐突に挿入されたり、1分30秒過ぎでハープシコードソロに続いてどんどんいびつな雰囲気に磨きがかかったりして、一癖も二癖もある怪しげな盛り上がりを見せる。初見殺しのオンパレードにふさわしい波乱万丈で摩訶不思議な遊び心に満ちた一曲である。
不穏なのにとても愉快で、難しくても諦めたくない気持ちにしてくれる、負けず嫌いの心にぐっと響くような音使いが素晴らしいです。この曲のほかには、ろじうらサーフィンの曲のノリが好きです。『Run It Bayou』、あわせてどうぞ。
