VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1011 『Behind The Screen』(蘇裕博・陳柏劭/螢幕判官 Behind The Screen/PC・iOS)

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18Light Gameがおくるサスペンスパズルアクション・螢幕判官より、

蘇裕博・陳柏劭作曲、『Behind The Screen』。タイトル画面で流れます。

台湾のインディーゲームスタジオ・18Light Game(原語表記:光穹遊戯)の代表作にあたる本作。1970年代の台湾を舞台に、父親を殺すに至った青年の半生を追体験し、事件の真相と社会の実像に迫ることになる。手書き風のシュルレアリスティックなグラフィックのもとで紡がれる、実話をベースにした重く癖の強い作風が特徴で、ニュース映像の語りと主人公の視点とを交互に追いながら、虚実の入り混じった物語を進めていく。いじめ、不倫、家庭内暴力階級差別など、当時の台湾社会を下敷きにした生々しいストーリーテリングの合間に、パズルやミニゲームが挿入され、頭を使うものから反射神経を問うものまで幅広く取り揃えられている。独特な歪みと摩訶不思議な魅力に満ちた仕上がりとなっている。後にAndroidとスイッチに移植された。

本作の音楽を担当するのは蘇裕博(Nyubor)氏と陳柏劭(Paul)氏。蘇氏は台湾出身の作曲家で、音楽制作スタジオ・TURN SOUNDに所属している。陳氏については情報がすくなく具体的なプロフィールは不明だが、同スタジオに所属しているものと思われる。本作では幼少期、少年期、青年期の三つの時代にあわせて、軽快でメルヘンチックな楽曲群、一転して西洋風のファンタジー感漂う楽曲群、暗澹とした心情が滲む楽曲群など、シーンに沿った個性的な音楽が用意されている。サウンドトラックはSteamのDLCとして配信されているほか、通常盤やデジタル盤などが各種ストアで発売されている。

タイトル画面で流れるのがこの曲である。ゲーム開始直後、タイトル画面に入る前に殺人事件のニュースが伝えられ、続いてタイトル画面(ダイヤル式のブラウン管テレビが斜めに傾いたような絵)が表示されるが、その象徴的な序幕をピアノ主体のクラシカルでノスタルジックな曲調で彩る。はじめは短く囀るようなアコーディオンが響くが、14秒からは弦の優雅で憂鬱な音色が加わり、美しくも猜疑的な色合いを帯びた不可思議なフレーズを奏でる。曲後半、1分10秒以降はピアノソロで尾を引くような和音とともにミステリアスな旋律を展開し、これから始まろうとする救われない物語への没入感を高める。聴くだけで身につまされるような感覚に陥る一曲である。

behind the screenというと画面の裏側ですね。ちなみに螢幕(yíngmù)は台湾・香港あたりの地域語で画面のことだそうです。飄々としたような曲ですが、音の隅々に闇が潜んでいる気がして、すごく作品の雰囲気に合ってますね。