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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1012 『暗く沈む世界』(桜庭統/テイルズ オブ エクシリア/PS3)

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バンダイナムコがおくる揺るぎなき信念のRPGテイルズオブエクシリアより、

桜庭統作曲、『暗く沈む世界』。エレンピオスのフィールドで流れます。

テイルズシリーズの15周年記念作として登場した本作。精霊の主・マクスウェルによって創造された世界、リーゼ・マクシアを舞台に、医学生の少年・ジュードは、自ら大精霊を名乗り、人と精霊を守る信念を貫く女性・ミラ=マクスウェルとの出会いを通じて、世界を揺るがす冒険に出ることになる。開始時に選んだ主人公の視点から物語を追体験していくシリーズ初のダブル主人公制が特徴で、大筋は共通しつつも片方でしか描かれないやりとりや、片方だけでは全容が掴めない展開などが存在する。戦闘面ではキャラ二人を同時に動かす共鳴モードを軸に、連携や共闘の感覚を重視したシステムを導入している。その他、ポイントを自由に振り分けてキャラを成長させるリリアルオーブ、ショップを発展させて商品の品揃えを充実させるショップビルドをはじめ、新要素も多い一方で、おなじみの料理システムやクリア後のやり込みなどが縮小された。後に続編の2が発売された。

本作の音楽を担当するのは桜庭統氏。テイルズシリーズには初代から携わっているフリーランスの作曲家である。青山響(田村信二)氏との共作が多いなかで、本作および続編の2はテンペスト以来の単独での作曲となっている。本作ではダブル主人公制を活かして主人公ごとに通常戦闘曲が用意されている点が印象的で、全体的にはやや暗い曲調でおとなしめな楽曲が多い。サウンドトラックは主題歌を除き3枚組(初回限定盤は声優のスペシャトーク付きの4枚組)で収録されている。

エレンピオスのフィールドで流れるのがこの曲である。大精霊が創ったリーゼ・マクシアとは隔絶された別世界で、精霊術で栄えるリーゼ・マクシアとは対照的に、精霊の減少により滅亡の危機に瀕している。そうした暗澹とした雰囲気を彩るにあたって、非常に深く重たいピアノを主軸に据えたスムーズジャズに仕上がっている。ゆったりとした低音の旋律に、さながらアナログレコードをかけているかのようなスクラッチノイズが寄り添うことで、切なくも落ち着きのある円熟した音色を響かせる。1分13秒頃にようやくサクソフォンが入ると、そのグルーミーな調べがたちまち心に染みわたるような哀憐を誘う。曲名通り、どこまでも暗く沈んでゆく感覚を見事に表現した一曲である。

二日遅れですが10周年記念に(※記事執筆時)。本作の楽曲は耳に残りにくいと言われがちですが、この曲の温度感はとてもいいですね。