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#1021 『異形の者達 ~巨像との戦い~』(大谷幸/ワンダと巨像/PS2)

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SCEがおくるアクションアドベンチャーワンダと巨像より、

大谷幸作曲、『異形の者達 ~巨像との戦い~』。第1と第6の巨像戦の前半で流れます。

ICOの開発チームによる新作として登場した本作。巨像が棲まう古えの地を舞台に、最愛の少女を失った少年・ワンダは、16体の巨像を倒せば少女の魂を呼び戻せるという姿なき天の声に従って巨像を打ち倒すことになる。シームレスに繋がる広大なフィールドを愛馬に跨って駆け巡り、剣の光を頼りに巨像を探して戦うのが主な流れで、それ以外の要素は極限まで削ぎ落されている徹底ぶりが特徴である。肝となる巨像戦は、巨躯によじ登って弱点を見つけて剣を突き立てることで攻略可能で、どこが弱点でどうやって辿り着くかなどのパズル要素と、うまく力を溜めたり振り落とされないように注意したりするアクション要素の双方を併せ持つ。一つ一つの挙動や操作感は重めだが、それによって巨像と対峙する感覚がじかに伝わるようになっていて、重厚で気迫のある作風を深く味わえる傑作に仕上がっている。後にPS3にHD移植されたほか、PS4でリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは大谷幸氏。音楽制作会社イマジンに所属する作曲家で、平成ガメラシリーズなどを筆頭に映画やアニメの劇伴を多く手がけている。ゲーム音楽に関しては少数だが担当したことがあり、本作以前にはフライトシムのスカイオデッセイなどでの作曲経験がある。本作では儚く退廃的な世界観に見合った静謐な無国籍サウンドと、巨像戦の圧倒的な臨場感を補強する壮大なオーケストラサウンドが揃っていて、ほとんどの戦闘では進捗に応じて途中で曲が切り替わる。サウンドトラックは未使用曲も含めて収録されている。

初めての戦いとなる第1の巨像と、中盤に差しかかる第6の巨像との戦いの前半で流れるのがこの曲である。まだ攻略の糸口もない手探りの状態で巨像に挑む、ともすれば無謀にすら思える状況を、イントロから凄まじく圧迫感のある管楽器の演奏で没入感たっぷりに盛り上げる。分厚いトランペットやホルンの旋律に、神秘的だが不穏でもあるコーラスが寄り添うことで、恐怖と昂揚感を同時に刺激する。37秒あたりからストリングスが存在感を増すようになると、その美しくも激しい気高い音色が他の楽器と混ざり合い、聴いているだけで気圧されてしまいそうな威厳を放つ。勝ち目があるのかと戸惑いつつ、それでも臆せず立ち向かう痛切な覚悟を滲ませる一曲である。

12曲まとめていただいたリクエストの第3弾です。初戦でこの曲から『開かれる道 ~巨像との戦い~』に移る展開がとても印象に残ってます。『開かれる道 ~巨像との戦い~』、あわせてどうぞ。

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