角川ゲームスと24Frameがおくる戦車と犬と人間のRPG・メタルマックスより、
門倉聡作曲、ゼノの『彼方』。東京砂漠で流れます。
戦車を駆って賞金首を狩るメタルマックスシリーズの25周年記念作にあたる本作。凶悪なモンスターの来襲により人類滅亡寸前の廃墟と化したデストキオを舞台に、仲間や家族をモンスターに殺されたハンターの主人公は復讐のために戦車で戦うことになる。拠点は広大な廃墟のなかにアイアンベースと呼ばれる施設ただ一つ、他に町も何もない荒漠とした世界観が特徴である。概ね一本道のシナリオに沿って進めるゲーム性に変更され、探索の自由度は2周目以降のやり込み要素として扱われるなど、従来とは異なる点が多い。戦闘で素材や武器を集めて改造するハクスラ&カスタマイズ要素はそれなりに充実していて、良くも悪くも新生メタルマックスとして挑戦した意欲作に仕上がっている。後にシステムのテコ入れや自由度の向上、犬の追加など広範に見直したリメイク版がPS4とスイッチに登場した。
本作の音楽を担当するのは門倉聡氏。メタルマックスシリーズおなじみの作曲家である。様々な要素が削られたり変更されたりしたなかで、音楽面は変わらず氏が単独で手がけている。破壊し尽くされた作風を彩るにあたって、穏やかな退廃感を漂わせるものからジャジーな曲調のもの、ギタードリヴンな熱い戦闘曲まで粒揃いの楽曲群を楽しめる。また、例によって過去作からのアレンジも含まれる。サウンドトラックは本作の限定盤に同梱されている。
東京砂漠で流れるのがこの曲である。その名の通り東京の湾岸地区が丸ごと砂漠になった場所で、唯一の拠点であるアイアンベースが位置する最初のエリアを指す。一目で分かる廃れっぷりをそのまま音に落とし込むかのごとく、この曲は甘美な哀愁漂うアカペラで始まる。高らかな歌声が響き渡るなか、15秒頃でギターとドラムの伴奏が加わり、荒涼としつつも小気味よい昂揚感を生み出す。45秒からはシンフォニックな響きを伴うことで、美しい高音を利かせながら豊かな盛り上がりを見せる。垢抜けているようでどこかプリミティブな響きをも併せ持ち、かつては大都会だったが今は見渡す限りの砂漠という対比を見事に表現した一曲である。
曲と世界観の親和性が素晴らしいですね。シンプルな曲名がまたよく合ってます。