VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1039 『賢者の墓』(小林美代子/グランストリーム伝記/PS)

www.youtube.com

シェードがおくるアクションRPG・グランストリーム伝記より、

小林美代子作曲、『賢者の墓』。賢者の墓場で流れます。

クインテットの子会社として設立されたシェードによるデビュー作にあたる本作。大地が水没し、四つの浮遊大陸のみが残る世界で、大陸を浮遊させるために必要な儀式を執り行える賢者の子孫たちが失踪し、各大陸が徐々に落下しつつあるなか、謎の魔導器を左手に宿す青年・リューンは世界を救う旅に出ることになる。終末世界を舞台にした王道なファンタジーRPGで、ダブルヒロイン制でエンディング分岐する重厚なシナリオが待ち受ける。あらゆる物質を記憶し、複製できる魔導器・セプターを使った謎解きが特徴で、戦闘は経験値の概念がなく3Dポリゴンでコマンド入力などをおこなう対戦アクション風のシステムを採用している。アクションやグラフィックはやや大味だが、魅力的な世界観で補って余りある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは落合貴子氏、小林美代子氏、田中公平氏、曳地正則氏。落合氏、小林氏、曳地氏は当時クインテットに、田中氏は音楽制作会社イマジンに所属している作曲家である。このうち田中氏は本作でムービーシーンの劇伴作曲を担当している。クインテットのソウル三部作(小林氏と曳地氏は天地創造に携わっている)に通ずる独特な作風にあわせて、本作でも幻想的な色合いを帯びた楽曲が各種取り揃えられている。また、町曲に関しては各地の問題を解決する前後で曲が切り替わる。サウンドトラックは発売後まもなく登場したが、未収録のものもすくなくない。

賢者の墓場で流れるのがこの曲である。百年前に大陸を浮遊させた第一人者たる賢者が眠る場所で、最初に足を踏み入れるダンジョンでもある。そうした壮大な物語の序幕を彩るにあたって、クワイアとウッドブロックと思しき打音が印象的なイントロから始まる。30秒あたりでメインメロディーが入るも、神秘的な伴奏に包み込まれて、音量は小さめで音程も低め、主旋律でありながら控えめなベースラインのような立ち位置に終始する。時折、清涼感と寂寥感の滲む笛のような音や、異国情緒漂うシタールの音色が入り、1分手前からはコーラス主体の間奏が紡がれることで、幻想的な空気をものの見事に醸成する。滅びゆく世界で物語が動き出す感覚を鮮烈に印象付ける一曲である。

音に神秘が凝縮されているというべきか、退廃的だけど好奇心をそそるような感じがとても素敵です。最初の町、問題解決前で流れる曲がまた非常に秀逸で、序盤から心奪われる曲が目白押しです。同じく小林さんの作曲で『アローナ』、あわせてどうぞ。

www.youtube.com