VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1183 『メリー・クリスタケ村』(下村陽子/マリオ&ルイージRPG2/NDS)

www.youtube.com

アルファドリームがおくるブラザーアクションRPGマリオ&ルイージRPGより、

下村陽子作曲、2の『メリー・クリスタケ村』(仮称)。同名の村で流れます。

マリオとルイージが協力して大冒険を繰り広げるマリオ&ルイージRPGシリーズの2作目にあたる本作。今度のマリオとルイージは、天才発明家のオヤ・マー博士が発明したタイムマシンで過去へと旅立ったまま失踪したピーチ姫を追って、ナゾの侵略者・ゲドンコ星人に立ち向かうことになる。本作では過去と現代を行き来することから、いつもの兄弟二人にベビィマリオベビィルイージを加えた4人で冒険する点が特徴である。A・B・X・Yの各ボタンに各キャラの操作が割り当てられていて、それぞれの固有アクションはもちろん、大人とベビィのペアで発動できるおんぶアクションや、大人とベビィを分けて行動するぶんりアクション、兄弟ペアで行う恒例のブラザーアクションなど、様々な組み合わせを駆使してギミック豊かなステージを攻略していく。シナリオ面では、タイムトラベル、言語の通じない異星人の侵略行為など、SF的なテーマを扱っているため、暗めで不気味な路線をとっている。ユニークで遊び甲斐のある操作性が光る意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは下村陽子氏。フリーランスの作曲家で、マリルイシリーズには全作携わっている。本作ではシリーズおなじみのチャーミングでときどきシリアスなサウンドを概ね踏襲しているが、全体的に作風が暗いことを受けて、ややトーンを抑えた不穏でメランコリックな楽曲が多い。また、広義のマリオシリーズからの歴代BGMのアレンジがいくつか存在する。サウンドトラックについては、1~3までのシリーズ曲を厳選収録したサウンドセレクションがクラブニンテンドーの特典として配布されていたが、本作からは6曲のみの収録に留まっているため、正式曲名が判明していないものもすくなくない。

メリー・クリスタケ村で流れるのがこの曲である。物語序盤、過去へ向かって間もなく訪れる寂れた村で、雪とクリスマス風の装飾による景観が印象的である。陽気なネーミングや最序盤の村というイメージとは裏腹に、すでに侵略されていて廃村のような雰囲気が充満している。そうした様子を彩るにあたって、第一音から震えるストリングスを響かせて張り詰めたムードを漂わせる。木琴やタンバリン、トライアングルなど、本来なら明るく茶目っ気のあるはずの楽器を用いて不安定な旋律を紡ぐことで、並々ならぬ焦燥を誘う。クリスマスをモチーフにしているからか、音程こそ違えどそのリズムはジングルベルのサビによく似ていて、そのまま歌詞を載せて歌おうと思えば歌えそうだが、どうしようもなく悲哀に満ちている。ループへの橋渡しとして55秒頃から始まるアコーディオンパートはいっそう深い憂いを帯びていて、1分5秒あたりで弦のピチカートや鐘の音が響くとますますアンニュイな空気に包まれる。やるせないのに何とも聴き心地の良い退廃的な響きを帯びた一曲である。

不吉なのにとても心地良い、なんだかアンビバレントな感じですね。それを最序盤に持ってくるセンスが好きです。