サイバーコネクトツーがおくるアクションRPG・.hackより、
福田考代作曲、Linkの『シックザールのアジト』。
敵アジトの会話イベントで流れます。
サイバーコネクトツー製のメディアミックス作品群・.hackシリーズのうち、一応の完結作にあたる本作。期待のMMORPG・The World R:Xの公開が迫るなか、ゲーム好きの中学生の主人公・九竜トキオは、転校生であり自分の夢に出てくる姫と瓜二つの少女・天城彩花に渡された黒いゲームディスクによって生身のままThe Worldへ転送されたことをきっかけに、ゲーム内部の歪んだ時間データを正すため戦うことになる。時間移動の概念により、過去作の舞台も含めて網羅的に冒険できる点が特徴である。随所に漫画風のコマ割りを駆使したイベントシーンを挟みながら、新旧キャラ勢揃いの物語を体験できる。30人以上の仲間とユニゾンを組んで共に探索したり戦闘したりすることが可能である。戦闘システムはタイミングよく攻撃を入力してユニゾン相手と連携し合う形式で、必殺技の演出が長めだがスキップ不可など、ややスローテンポなところがある。単調さは漂うがシリーズ横断的な要素が盛り込まれた仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは福田考代氏。サイバーコネクトツーに所属する作曲家で、.hack作品群ではおなじみのシリーズサウンドの生みの親である。本作では、シリーズの例に漏れずボーカル曲が充実していて、同じくCC2所属のボーカル担当である三谷朋世氏が唄う新曲のほかに、過去作のテーマソングや、梶浦由記氏が作曲したアニメ版由来の歌も搭載されている。インスト曲はクワイアやピアノを印象的に用いた楽曲が多く、独特な神秘と盛り上がりを兼ね備えている。サウンドトラックについては、各種ボーカル曲やボーナスも含めて収録されている。
敵アジトの会話イベントで流れるのがこの曲である。シックザールとはThe Worldの運営元に雇われているハッカー集団のことで、主人公陣営と対立する敵組織である。いかにも曰くありげな会話の一幕を彩るにあたって、ボサノヴァ風のジャズでゆとりある豊かな印象を与える。緻密なリズムを刻むトライアングルの金属音に、ぽろぽろと零れ落ちるように奏でられるピアノ、穏やかなウッドベース、麗艶な響きを帯びたラッパが重なり合うことで、非常にくつろげるような、それでいて油断ならない手強さがあるような空気感を醸す。余裕を持て余していそうな雰囲気がひしひしと伝わってくる一曲である。
流しっぱなしにして聴き浸りたくなるようなお洒落な曲ですね。
