VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1199 『セレクト』(甲田雅人/マジシャンズデッド/AC)

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バイキングがおくるハンドパワー多人数対戦アクション・マジシャンズデッドより、

甲田雅人作曲、『セレクト』。キャラクターセレクトおよびマッチング画面で流れます。

ガンスリンガーストラトスの開発元として知られるバイキングの初の自社パブリッシングタイトルにあたる本作。魔法使いが現存する世界を舞台に、突如として世界政府機関にテロリスト認定された魔法使いたちと、魔法使いを弾圧すべく人工的に生み出されたサイキッカーたちが、互いに相争うことになる。魔法使い陣営とサイキッカー陣営に分かれて3対3で戦うオンライン対戦アクションで、対戦相手を倒すなどして先に敵チームの勢力ゲージを削り切ったほうが勝ちである。非接触型モーションセンサーが搭載されていて、画面に向けてグーやチョキなどハンドサインをすることで直感的に魔法や超能力を繰り出せる。草木を炎上させたり水場を感電させたりといった属性のシナジー効果や、敵や障害物をテレキネシスで放り投げる要素など、斬新なアクションが盛り込まれている。世界観やキャラ設定は意味ありげだが掘り下げられる機会がすくないほか、稼働当初は地上戦を軸としたゲーム性だったが、アップデートで飛行が加わり駆け引きが複雑化するなど、やや人を選ぶ側面があった。総じて独自の操作体系が光る意欲作に仕上がっている(現在はサービス終了済み)。

本作の音楽を担当するのは甲田雅人氏と下村陽子氏。1曲のみの参加で飯田誠氏、編曲のみの参加で小見山優子氏も携わっている。甲田氏は音楽制作会社デザインウェーブに、飯田氏はバイキングに所属する作曲家である。下村氏と小見山氏はフリーランスである。奇しくも在籍時期はほぼ被っていないが、甲田氏、下村氏、小見山氏は元カプコンという繋がりがある。現代ファンタジーSFの作風に寄り添うように、本作ではオーケストラにロックや電子音楽を組み合わせたファッショナブルなサウンドが揃っている。サウンドトラックについては、勝敗のジングルやボーナストラックなども含めて収録されている。

キャラクターセレクト画面とマッチング画面で流れるのがこの曲である。試合前の準備時間および待ち時間を彩るにあたって、出だしから華やかに響く電子音によって刺激的に盛り上げてくれる。14秒からドラムが本格参戦すると、シンセのけばけばしい音色に引けを取ることなくしっかりと存在感を発揮しながら拍を刻む。30秒手前になって主旋律が加わると、合成音声と思しき透き通った歌声が朗々と響き、幻想的であると同時にスタイリッシュな雰囲気を漂わせる。とりわけ1分10秒以降など高音域で歌い上げるフレーズは天にも昇るような恍惚な響きを帯びていて、派手な曲調のなかに甘美な印象がうまく融け込んでいる。来る戦いに向けて存分に士気と没入感を高めてくれる一曲である。

派手だけど聴き飽きないような良い温度感ですね。