VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1200 『Into Sunset』(Alexei Omelchuk/Metro: Last Light/PS3・X360・PC)

www.youtube.com

4A Gamesがおくるサバイバルアクションシューター・Metroより、

Alexei Omelchuk作曲、Last Lightの『Into Sunset』。バッドエンドで流れます。

ロシアの作家・Dmitry Glukhovsky氏によるSF小説「Metro 2033(原題:Метро 2033)」を原作とするシリーズの2作目にあたる本作。核戦争により地上が荒廃し、ミュータントが跋扈するなか、わずかな人類がモスクワの地下鉄跡で細々と暮らす終末世界を舞台に、1年前に壊滅したはずのダークワンに生き残りがいると知った主人公・アルチョムは、手がかりを追ううちにやがて人類の存亡を賭けた争いに巻き込まれることになる。前作に連なる直接の続編であり、FPSながらもストーリードリヴンでシングルプレイに特化したゲーム性と、惨くて細緻な世界観描写は健在である。ミュータントと正面からやり合うことが多かった前作と比べ、本作では対人戦を重視していて、敵の目を掻い潜るステルスアクション的な要素が強まった。また、取った行動に応じてエンディングが分岐する仕組みが搭載されている。前作ありきの物語だが、順当に奥深さが増した仕上がりとなっている。後に前作とセットでリマスターしたRedux版がPS4やXboxOne向けに登場した。

本作の音楽を担当するのはAlexei Omelchuk氏(ファーストネームはAlexeyとも)。ウクライナ出身の作曲家で、Metroシリーズには前作に引き続き携わっている。退廃的な作風にあわせて、本作ではダークなアンビエントを中心としたサウンドを聴くことができる。環境に溶け込む静かな曲調から、サバイバルのイメージに沿うような鋭いストリングスを用いた恐々とした曲調、なかにはアコーディオンアコースティックギターを活かした独特な温度感のある曲調まで、幅広く取り揃えられている。一部クラシック音楽からの引用も含まれる。サウンドトラックはボーナストラック込みで収録されている。

バッドエンドのスタッフロールで流れるのがこの曲である。凄絶に散り、穏やかに締め括られる象徴的なシーンを彩るにあたって、まるで天に誘うように響く甘く哀しい歌声が、ゆったりと寄り添うピアノや、味わい深い低音を奏でるチェロと重なり合う。その旋律は心洗われるほど美しいが、それと同時に心が痛むほど切ない印象を帯びている。35秒からピアノのみとなってしばらく静かに独奏すると、後を追うように1分10秒から今度は弦の見せ場があり、チェロの豊かな演奏を支えるようにピチカート(弦を指ではじく奏法)による伴奏が入る。終着点を迎えたシーンを表現するにふさわしい、じんわりと滲むような哀愁を湛えた一曲である。

ただバッドなだけじゃない、味のあるエンディングという感じですね。グッドエンドの曲『The Farewell』も素敵です。あわせてどうぞ。

www.youtube.com