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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1220 『吹き荒ぶ黄塵を抜けて』(古代祐三/パズドラクロス 神の章/龍の章/3DS)

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ガンホーがおくるパズルRPGパズドラより、

古代祐三作曲、クロスの『吹き荒ぶ黄塵を抜けて』。デュン砂丘などで流れます。

スマホアプリの金字塔・パズドラのコンシューマー向け第2弾にあたる本作。ドロップエネルギーと呼ばれる特殊な力に満ちたドラゴーザ島を舞台に、常人には見えないドロップを見る能力に目覚めた主人公は、モンスターと絆を結んで戦う龍喚士となるべく旅に出ることになる。同色のドロップを三つ以上揃えて敵と戦う基本的なルールはそのままに、島を巡る冒険、主人公やパートナーの心身の成長、仲間との交流など、オーソドックスなRPGらしい要素が詰め込まれている。本作独自のシステムとして、魂キャプチャーとソウルアーマーというものがあり、戦闘中にモンスターをキャプチャーすることで入手できる素材からアーマーを作成し、そのアーマーを主人公が装備すると、主人公が素材元のモンスターのスキルを発動することができる。そのため、仲間モンスターのみならず主人公も戦闘に参加することになる。登場モンスターは500体以上、進化や覚醒といった育成要素は健在で、バージョン違いによる専用モンスターが存在するほか、通信機能を活かした協力・対戦・交換要素も搭載されている。非常に王道を征く仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは伊藤賢治氏、尾崎景吾氏、古代祐三氏、山岡晃氏、山本世一氏。伊藤氏はフリーランス、尾崎氏はガンホーの子会社であるゲームアーツ所属、古代氏は自身が代表を務めるエインシャント所属、山岡氏は当時ガンホーの子会社だったグラスホッパーマニファクチュア所属、山本氏はガンホー所属の作曲家である。このうち伊藤氏はスマホ版原作でも作曲しているシリーズサウンドの生みの親である。本作では尾崎氏がサウンドディレクターとしてまとめつつ、伊藤氏が戦闘曲、古代氏がフィールド曲、山岡氏がキャラのテーマ曲を中心に手がけていて、一部の楽曲はその三名の合作である。本格RPGの雰囲気にぴったり寄り添うように、生音を用いた聴きやすくてバラエティ豊かで情熱的な楽曲群が揃っている。サウンドトラックは2枚組で収録されている。

デュン砂丘やヴァートリー台地で流れるのがこの曲である。物語中盤に訪れる、土色の景色が広がる荒涼としたフィールドである。サントラ収録音源では47秒間ほどイントロ部分が追加されていて、オカリナソロによる澄んだ寂寥感のある音色で始まる。16秒でオカリナが抜ける代わりにギターが入ると、ますます強く心揺さぶるような哀愁を滲ませる。オカリナが再加入した後、ややあって30秒過ぎからピアノ、ドラムス、ベース、ストリングスが相次いで加わると、徐々に着実に盛り上がっていく。ストリングスがトレモロ(同じ音を小刻みに反復し、ざわざわと鳴動するような響きを生む奏法)を披露した後、メインフレーズに突入する。その旋律は物哀しいが、高音を中心に冴え冴えと響き渡ることで、寂しさのなかに凛とした生命力を感じさせる。特に1分半過ぎからはサックスの見せ場があり、甘く美しくしたたかな音色を奏でた後、1分48秒以降はオカリナとも合流してダブルで主役を務め、ループ直前の最後の一音まで、響きの美しさをたっぷり堪能させてくれる。とびきりの味わい深さを持つ一曲である。

フィールド曲に求めるものが凝縮されているような、病みつきになる曲ですね。同じく古代さん作曲で火の街で流れる『火の街ガイザー』が素晴らしく素敵で、そっちも町曲に求めるものが凝縮されている印象です。あわせてどうぞ。

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