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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1230 『モーグリの森』(岩崎英則/ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー/Wii)

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スクエニがおくるアトラクションアドベンチャーFFCCクリスタルベアラーより、

岩崎英則作曲、『モーグリの森』。モーグリの森駅で流れます。

FFの流れを汲む外伝作品群・クリスタルクロニクルシリーズのうち、6作目であり現時点での最終作にあたる本作。クリスタルを身に宿す影響で特異な力を持つクリスタルベアラーの青年・レイルは、飛空客船の護衛をしていたところ、絶滅したはずのユーク族の生き残り・アミダテリオンによる謎の妨害を受けたため、邪魔された借りを返すべくアミダテリオンを追って旅することになる。FFらしいRPG要素は控えめで、Wiiリモコンを用いた能動的な操作性と、自由度の高いオープンワールド風のゲーム性を押し出したシングルプレイ用のアクションアドベンチャーである。主人公が引力を操る力を持つことから、リモコンのポインターで照準を合わせた対象を引き寄せたり投げ飛ばしたり、自身が対象めがけて跳躍したりできる。障害物や敵のみならず、引力の力で住人にイタズラを仕掛けることも可能である。飛空艇の操縦やステルス、舞踏会でのリズムゲームなど、随所にミニゲーム的なアトラクションが散りばめられている点が特徴で、メインストーリーに絞れば短めだが、やり込み要素を含めると長く遊べる。ジャンルの変更、特殊なアクション性、従来の世界観の延長線上ではあるが毛色の異なる作風などが相まって、独自性の強い異色作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは岩崎英則氏、谷岡久美氏、山﨑良氏。谷岡氏は当時、岩崎氏と山﨑氏は現在もスクエニに所属する作曲家である。谷岡氏はこれまでFFCCシリーズを単独で手がけてきたシリーズサウンドの生みの親だが、本作では少数のみの作編曲に留まっている。本作ではゲームジャンルや作風が変わったことからか、今までのシリーズで培われてきた古楽民族音楽的なアプローチに限定せず、オーケストラ、ポップス、ブルーグラス、ジャズ、ロックなど、幅広いサウンドが揃えられている。また、一部過去作からのアレンジも存在する。サウンドトラックは2枚組でジングル集も含めて収録されている。

モーグリの森駅で流れるのがこの曲である。モーグリはFFシリーズのマスコットモンスターの一種で、本作ではモーグリ商会を通じて至るところで姿を確認できる。そんな彼らのゆかりの土地であり、大樹の上に築かれた緑豊かな集落と、流通網を支える列車の駅が一体化したのがモーグリの森駅である。独特な景観を彩るにあたって、味わい深いヒーリングミュージックによって心安らぐような聴き心地を生む。プサルテリーを彷彿させる豊かな弦の音色が紡ぐ特徴的なイントロに続いて、12秒から澄んだパンフルートの音が加わると、非常に幻想的で落ち着く印象を与える。ひとしきりメインフレーズを奏で終えても、38秒から後を追って遠くのほうで笛が鳴り響いたり、1分10秒以降の間奏部分でも同様に粘り強く響いたりすることで、途切れることなくずっと聴き浸れるような余韻をもたらす。1分56秒から楽器の生音が息を潜めるようになると、それ以降、曲の終わりまでチルアウト系のリズムを維持し続ける。とても癒される一曲である。

1ループしか収録されてませんが、ループの際はそのまま曲の終わりから冒頭に戻ります。聴いていると肩の力が抜けていくような感じですね。